初デート


先日筆者の同胞がブログを立ち上げた。本来ならばここで颯爽とトラックバックを用意するのだが、そんなことは筆者には無理だ(なぜならば筆者はメカ原人)。カリスマ・SE兼マイ・パーソナルSEのピトシ君(仮名)にでもお任せするとしよう。ちなみにピトシ君(仮名)のブログはコチラ


上記のやり取りからも、筆者の効率主義っぷりは、目に見えるであろう。そう、筆者は究極なまでのメンドクサガリ屋である。よって、アウトソース(外部委託)ができる分野は全てアウトソースする傾向がある。はっきり言って、自己の性欲や便意ですらアウトソースする傾向もある。
そんな中、最近ネタ不足気味であった筆者に一本のネタが舞い上がった。そう、同胞ブログの初デート」編である。
しかもカリスマ・SEことピトシ君ですら「初デート」についてブログで語っている。
これは、筆者も初デートについて語るしかない!ということで、人のネタからインスパイアされたこのネタ、あたかも自分が最初に思いついたかのように書こうと考えている。

さて、自分で言うのもナンだが、筆者の自己分析を行おう。若干の情報はプロフィールに書いておいた。
身長:175CM
体重:65kg
目:ギョロッとしている
性格:温厚・ネクラ。
話し方:超カリスマ・コミュニケーター。





うん。ぶっちゃけ、もてない訳がない!
ってか、モテまくりスティ!!
うん。もてるに違いない!!
もててた!?
・・・もてたに違いない。
・・・もててほしい。
・・・もてる人生も経験してみたい。
・・・一度でいいからもててみたい。

と徐々に声が小さくなっていく筆者の心の叫びはさて置き、そんな筆者の甘酸っぱい初デートのお話、いざ開幕。。。







時は西暦1989年夏。筆者は13歳、中学2年生であった。当時の筆者のジュニアの周りにヘアーが全くないテロテロ坊主であった。
が、そんな筆者、身長だけは誰にも負けず、13歳の段階で170cmの大巨人であった。「将来は195cmを越え、日本人初のダンクシュートをかます」とチヤホヤされるほど有望な体型であった。もちろん、後に酒とタバコのやりすぎで身長が伸びなくなったのは別の話。武器は明るいトークと黒ブチめがね。







・・・えっ?黒ブチ?







当時筆者の中でカリスマ・芸能人と言えば、Mr.巨線であった。そう、大橋巨線。
インテリのくせにクイズの司会をやらせれば世界イチである。

「将来俺は巨線を越える」を合言葉にまずは外見から、目を悪くしたアカツキに両親の反対の声も耳にせず、メチャクチャいけてるメガネをかけた。そう、黒ブチメガネ。


さて、中学生のモテル条件とは、地方によって変わる。ちなみに関西の場合、①面白い・ひょうきんモノでクラスの人気者、②スポーツが出来る、③勉強が出来ない、という優先順位と条件らしい(妻談)。


が、筆者はブッチギリの江戸っ子であるため、東京は下町の中学校に通っていた。ここでモテル条件とは、①優しい、②容姿端麗(背は自分より高い)、③スポーツが出来る、④勉強ができる、⑤面白い、という優先順位と条件である。④を除けば条件を満たしている筆者。ブッチギリでモテまくりスティである。いや、もてていたに違いない。そして彼女達は恥ずかしくて筆者を誘えなかったのであろう。うん。そうに違いない。



そんな中、ある日の放課後、掃除当番だった筆者(とその取り巻きども)がクラスを掃除していると、掃除当番ではなかった同じクラスの女子ことケロ(あだ名)が筆者を呼び出した。はやし立てる男子とハンケチを噛み締める女子を尻目にケロと筆者はベランダに出る。



目の前に広がる夕焼けラブソティは、後に筆者作詞の名曲「夕凪ユニオン」の原子であった(実は世の中にある名曲の半分は筆者が書いているという噂もある、かもしれない)。





「筆者、今年ペアシャツ誰かと着るの?」



・・・イキナリのキラークエスチョンである。



さて、「今年」とはどういう意味か?「ペアシャツ」とは何か?解説しよう。
その前に背景情報として「同学年の女子は激戦市場」ということについて解説する。





中学生のときの1年の差は大きい。はっきり言って筆者の股間サイズほどデカイ。つまり、上級生の男子が狙うは、1年下の女子となる。これは、先に思春期を迎えてしまう女子はどうしても同学年の男子がガキに見えてしまうこと、そして何より女子にとって「xx先輩と付き合っている」というステータスが存在するのだ。ということから同学年の男子は同学年の女子に見向きもされない。そして、1年生のときは苦汁をガブガブのみまくり、2年生になって1年生女子を狙い、3年生になって2年生女子(もしくは1年生女子)を狙う。ちなみに高校生になると中学3年を狙う。という傾向を辿る。



よって、まとめると、同学年の女子に告白されることは稀(ってかナイ)


ということが言える。





さて、「今年」と「ペアシャツ」を解説をしよう。
筆者の通っていたイケテイナイ中学校は夏の遠泳合宿という人間の限界地をはるかに越えている合宿を行う。期間は1週間。毎日朝から晩まで泳ぎまくり、最後の日は遠泳の日。1年生は3km、2年生は6km。3年生は指導者となり、1年もしくは2年の遠泳をコーチとして付き添う。3年生コーチは指導者であるにもかかわらず、泳いでいる下級生の隣で何故か一緒に遠泳するのである。もちろん、3年生のコーチは指導している下級生(女子の場合が多い)に神と崇められる。もちろん、そこから晴れた惚れたの発展もある。が、大体セクハラをして終わる。


合宿最後の日、遠泳イベントが行われ、そのまま夜のキャンプファイアー大会へとつながる。火を囲み、踊り、歌い狂うという原始的なイベントが行われるその大会では、恋人である男女がペアシャツを着用するのである。
ちなみに、このペアシャツ、学校中に「僕らカップルなんですわ」と公言しているようなものであり、一度着用してしまうと学校公認カップルとして成立してしまうため、その後別れたりしようもんなら、かなり学校中の噂になる。



つまり意味合いを返すと、「3年生の有名男子グループのリーダー格とスケ番」みたいなカップルでないと着用してはいけない、的な雰囲気とニオイを放っているのである。




よって、2年男子が着用しようもんなら、3年男子からの凹リは間違いないのである。筆者は不良グループではない。が、かなり身長が大きいので「空手黒オビ、合気道6段」の腕前を発揮するまでもなく、「奴は強い」と感ずかれている(勘違いされている)存在だ。





さて、話を戻そう。





目の前に広がる夕焼けの悲しさを受け止めながら、筆者はケロに告げる。











「着る予定ないよ」
・・・さすがカリスマ・コミュニケーターである。「着る予定がない」。つまり予定はないが気持ちはある、という言葉の裏返しである。







「もし良かったらサ」
「うん?」
「私と・・・」








ここで筆者のジェントルメン魂に火がつく。そう、女子が、しかも同学年の女子が筆者に好意を抱いていることは分かった!筆者も小学1年生からのお友達ことケロには悪い感情は抱いていないっ!「女子に気持ちを言わせるとは何事じゃっ!」と墓場から筆者の爺が説教してくる前に、ジェントルメン魂を120%発揮し、筆者の想いを言わねばならない!!そう、ケロの前に!!













「ゴメン、何ていったの?」
・・・ぶっちぎりのジェントルメン魂である。先方が言った意味が分からない場合、聞き返すしかないではないか!さっすがカリスマ・コミュニケーター。










「だからぁ、ちゃんと言うと・・・」
「うん?」
「ケロは(自分のことをあだ名で呼ぶ女性は魅力的だ)筆者のことが好きなのっ」
「そうか・・・」
「ごめん、迷惑だった?筆者はケロのことをどう思ってる?」


これは困った。先に言われてしまったではないか。これでは筆者のジェントルメン魂が泣くではないか!墓場から爺がゾンビのごとく、夜な夜な筆者の部屋を訪問してしまうではないか!?こうなったら思いっきりロマンティックなコメントを言うしかないじゃないか!!そう、とってもスイートでメローなトーンで。










筆者は夕日に別れを告げ、視線をケロに合わす。ケロは呼吸を飲み、筆者の言葉を待つ。そう、彼女の顔を夕焼け色が包み込み、普段の20倍可愛く見える(注:「夕焼け色」とは「浴衣姿を照らす線香花火色」、「ゲレンデで君を包み込むスノボウェア色」、「キャンプファイアーの火が君のほてった顔を照らす色」と同意語。つまり、通常の何倍も女性を美しく見せる色なのである)。筆者はロマンティックなムードを作り出すのにふさわしい間を持たせた後に、そっと口を開く。








「ありがとう。気づかせてくれて。これが初恋って奴なのかな?」
・・・決まった。決まりすぎた。我が台詞に酔った筆者の黒メガネの奥の瞳は既に大海原を遠泳中さ。





無事、ここにカップル成立である。しかし考えてみよう。このカップルは、①2年男子の彼女ゲット、②しかも相手は2年女子、③しかもペアシャツを着用する予定、という禁断の果実3点セットだ。ぶっちゃけた話、筆者の中学校創業以来の掟破り3点セットである。学校中の注目の的になってしまうこと間違いない。






さて、夏休み初日。筆者はハチ公前でケロとの待ち合わせだ。思春期男子の初デート。小学1年からの知り合いであるケロと休みの日にマンツーマンで逢うのは初めてのことだ。極度の緊張感からか、筆者の血液は体のある一部に集中している。




「待った?」
ケロが登場だ。足元から当日のケロの服装チェックを行う筆者(注:筆者は女性を足元からチェックする習性をかねそろえている)。




靴、グッド!夏っぽくていいじゃない?
スネ、ファイン!チョット太めで健康的!
スカート、OK.太い足を惜しげもなく出すそのあたり、悪くない!
下っ腹、キュート!ポコッと出ているところがたまに傷!
胸元、超ナイス!年のワリにはかなり出ているね。
鎖骨、マーバラス!やっぱ女性は鎖骨でしょ。



ここで通常のパンピーならば顔に行くことだろう。当日の彼女の気合の入った顔と髪型をチェックすることであろう。が、筆者は女性のある部位に異常なまでのフェロモンを感じてしまう習性を持っているため、あえてこの部位を確認せずにはいられない。




二の腕!ファンタスティック!このプルプル感がたまらない!



さて、筆者の儀式は終わった。ということで安心して顔を見る。











・・・?
誰ですかこのオバちゃんは?
なぜ中学2年生で口紅を塗っているのですか?
100歩譲ったとしてもなぜアイシャドーですか?
あなたはこれから夜の街に繰り出すのですか?







チャラララッチャッチャーン♪



筆者のレベルが上がった。
「待ち合わせ時、事前に遠方から観察する術」を覚えた。
「ネズミ走り」を覚えた。




「筆者どうしたの?」ケロが聞く。
筆者は呪文を唱えた。
「ネズミ走り♪」









ケロは回り込んだ。
「ねぇ、どうしたのってば!」
「いや、別に」








チャラララッチャッチャーン♪


筆者のレベルが上がった。
「オバちゃんとデートする度胸」を身につけた。






その後ケロの顔を見れない筆者。それもそのはず。何故筆者は初デートをオバちゃんとデートしなければいけないのか?近づくと鼻孔にかすかな香水の香りが入ってくる。多分ケロが母ちゃんからくすねた香水を振り掛けたのであろう。そう、オバちゃん臭の根源であるオバちゃんエキスこと香水を。筆者は目を向けることおろか、鼻を向けることもできない。要するに、顔を見れないのだ。





この行為を「筆者が恥ずかしがっている」と受け止めたのか、ケロは調子を取り戻し、筆者を質問攻めする。



「ねぇ、楽しくないの?」
「何?恥ずかしいの?」
「ねぇ、筆者何したい?」




質問攻めしてくる輩の対処方法は今も昔も変わらない。そう、頭でワカラナイなら体で分からせてやると言うことである。筆者はおもむろにケロの両肩をつかみ、目と目を合わせ、真剣な表情で言う。








「ラブホ行こっ!」
き、決まった。まるであたかも「ペアシャツ買いに行こう」、「昼飯にしよう」ごとくの軽いノリのお誘いである。毛がはえ揃う前に大人の行動をとっているのである。







「バッチーン!」


ハチ公前のパンピーどもが繰り出す騒音が一瞬にして鳴り止み、静寂という無機質な空間があたりを埋め尽くす。徐々にこみ上げる左ほほの痛み。そう、ケロは筆者の左ほほをグーで殴ったのであった。





その後、キマヅイ空気を打破するため、筆者はキラークエスチョンをすることにした。






「何で?だって好き同士の二人が愛を確かめ合うのが何でグーパンチなの?」
き、決まった。痛みを伴う改革とはこういうことである。断られたという事実をあいまいにせず、あくまで明るみに出し、意思を確認するのである。正に紳士かつ真摯たる行為である。







「ボッコーン!」


筆者のサオの隣にいるスケさんカクさんこと2ボールズが悲鳴を上げる。そう、ケロはその太い足を凶器と代え、筆者の股間を蹴り上げたのであった。






「私、帰る!」

ケロは逃げ出した。



はぐれメタルを逃したときのあの空しさ。あの鼓動。あの何とも言えぬ無念さ。
それを感じながら筆者の初デートは終わりを告げた。






一時閉幕。。。