世界を股にかけるカリスマ・オーナーこと筆者は悩んでいた。そう、どうやって我がチームの選手を引退まで追い込むか、だ。


まず本日の話は、カテゴリーに分けるのが難しい。前フリは思い出系。だが、本編は物語系〜筆者オーナー〜である。よって物語系にカテゴライズさせていただいた。よって、前フリとして思い出系である「筆者のオーナー歴史」を説明させてもらい、次に今回のお話の予備知識を説明し、本編を開幕したい。若干字が小さいが、いつものように1行ずつスクロールダウンしてもらいたい。


前フリ
まず、筆者はオーナーという人生を送るようになってから早10年という時が経つ。
筆者のオーナー人生は鉄道から始まった。当時の筆者の夢は日本中の地方の名産物を購入し、日本を制覇することであった。しかし筆者の邪魔をする閻魔、阿修羅、風神&雷神などが多く、キングボンビーが筆者にまとわりついた瞬間には、彼らをコントロールするコンピュータをも操作して、キングボンビーをなすり付け、筆者は日本全国の物件を購入(=制覇)したこともある。これは毎年行わなければいけない儀式であったのだが、近年このミッションはUSAまで広がるようになり、筆者はアンチUSAのため、しばらく鉄道オーナーから遠ざかっている。

続いて筆者はシムという市のオーナーとなり、シム市に住む住民と言う虫けらどもの生活の質を良くする活動を行っていた。やれ公害がどうだの電車の便が悪いだのワガママ放題のシム市住民の虫けらどものQOL(生活の質)を完全レベルまで持って行ってやったのだ。そして、地震ゴジラだったか?)を投入して市を壊滅状態まで持って行き、再建までしてやった。虫けらどもは感謝することなかったので、再度地震ゴジラ?)を投入し、放置してやったのは言うまでもない。

そして東京ディズニーラン○を経営する会社「○リエンタルランド」の内定獲得に向け、筆者は遊園地のオーナーとなり経営まで行ったことがある。これはパソコン上でリモート経営し、世界屈指の遊園地とまで成長させた。その後、園のコンセプトを変える為、園内の野外広告を大人向け(タバコ、酒など)に統一し、スリル系と恐怖系の乗り物に改築。夜はムーディなベンチを用意し、大人向けの遊園地とシフトすることまで成功した。時代は少子高齢化が進んでいたので子どもが寄り付かない遊園地として認知されるようになり、経営は安定しまくった。ただし、売店は酒とタバコ、そしてレストランは全てステーキ屋という偏った遊園地となり、そこは大人の楽園と化し、最終的に名義を「失楽園」とした。

更に筆者はコンビニのオーナーとなりその経営まで手がけたことがある。筆者のノウハウを駆使し、木更津というド田舎に旗を揚げたコンビニ「筆者」。当初の常連客は同じように旗を揚げたバイク好きの少年少女の集団であった。その後、オニギリ、ドリンク、酒、タバコ、エロ本の5本の柱で全国チェーンまで成り上がった。また様々なPB(プライベートブランド)を開発したところ、大ヒット作品は「木刀」であった(全国チェーンのコンビニ「筆者」で買える「木刀」っていったい・・・)。当初の常連客であった少年少女が喜ぶこと間違いナシである。


そんなカリスマ・オーナーが現在取り組んでいるのは「サッカーチームの経営」である。


ちなみに本日のお話し、PS2のソフト「サッカーチームを作ろう‘04」(略してサカつく)にまつわるお話しのため、その事情を知っているとかなり面白いが、知らない人でも何とか笑えるようにしたいと思う。そのために予備知識のコーナーおよび呼び飛ばし可のコーナーを用意した。

ただし、現実のサッカーを知らないとかなり笑えないことをあらかじめお断りしておく。また、筆者は現実のサッカーはあまり詳しくないので、かなり知識に間違いがあるかもしれない。先に断っておく。



予備知識のコーナー
さて、予備知識として「サカつく」の契約交渉システムと選手の引退、そして秘書との会話について解説しよう。

①契約交渉システム
時期は毎年1月。対象は前年に契約が切れた選手。交渉方法は2つ。(1)オーナー自らが行う。(2)秘書に任せる。(1)の利点は最小の年俸で抑えるチャンスがあること。その代わり契約年数と年俸額を3回で交渉が成立しないと交渉失敗となる。(2)の利点は交渉が必ず成功すること。ただし、最小の年俸の2割り増しで契約してしまう(よって、裏技として(2)を行いリセットし、逆算して(1)を行うことも出来る)。契約年数は1-5年の幅であり、契約ごとに選手とオーナーのニーズのすり合わせによって行われる。契約交渉の度に年俸は上がるので有望選手は5年契約が基本である。
交渉の場は非常に冷めた場で、前年の評価や世間話などはナイ。オーナーから金額と年数を提示すると、選手がOK/NGを伝える。そこに会話は存在しない。

本日はそこに会話があったら、という架空話。しかも8月というシーズンの折り返しのタイミングで次の年の契約交渉への下地作り、という架空話である。

②選手の「引退」について。
選手は35歳-40歳程度で引退する。この引退イベントは大体契約が切れる年の冬に発生する。選手を引退まで持っていく利点は2点。①、「先輩選手の引退が若手選手の能力を喚起する」というイベントが生じ(生じる可能性がある)、若手選手のレベルアップにつながる(あくまでも可能性でレベルアップしないことも多々ある)、②引退選手アルバムのページに掲載される。引退選手アルバムとは自チームの選手のみ掲載され、オーナーにとっては最高の自己満アルバム。
よって、35-40歳の選手は、単年契約を行い、引退することを毎年祈ることになる(もちろん、この年齢でもレギュラーポジションの選手は複数年契約をして引退を伸ばす方が良い)。引退は選手から申し出るイベントであり、引き止めることができることもある(問答無用で引退する輩もいる)。こちらから「引退しろ」とは言えないため、契約失敗=解雇であり、引退ではない。

③秘書との会話:
ゲーム中の秘書との会話は全て事務・業務連絡のため、会話は一切ナイ。この物語の会話は全て架空の話し。




それでは予備知識を説明した。途中「呼び飛ばし可」を用意している。サッカー好き以外は呼び飛ばしてもOKであろう。

それではいざ開幕。。。














筆者オーナーは悩んでいた。今までお世話になってきた3選手を引退まで追い込む必要が出てきたからだ。



オーナーはオーナー室にて目を閉じた。チーム発起の思い出が甦る・・・。

震災から10年が経過し、今やスクスクと育ったかのように見える神戸。が、今でも被災の色は住民に影を落している。そんな神戸に新しいサッカーチームを作ることを決意したオーナーこと筆者。チーム名は「キッズ神戸」。イケメンのオーナーは記者会見を自費で開き、記者団一人一人にコーヒーを手渡し、その強い志を伝えていく。「私はこのチームを通じ、神戸の子供達に夢と希望を与えたい」、と。

会見中の質疑応答で記者団はオーナーに質問した。「最強のクラブに必要な要素は何ですか?」
質問を質問で返すオーナー。「『最強のクラブ』の定義って何ですか?」
記者団はしらけ切った。そう、記者会見という場で質問を質問で返すという行為は、渋谷のスクランブル交差点で若き血を1人で大熱唱するほどの自殺行為だからだ。
オーナーに耳打ちする女広報部長。「オーナー、質問を質問で返すのはマズイかと・・・。」
オーナーは鬼のような表情で広報部長に耳打ちする。「・・・キミィ、私はカリスマ・コミュニケーターだよ?記者会見でのノウハウぐらい私は分かっているんだ。まぁ見ていなさい」
記者団「オーナーはどう思います?」
オーナー「最強のクラブか・・・。『神戸の子供に夢を与えるクラブ』だと思うよ」
どよめく記者団。そう、全ての質問に対し「神戸の子どもに夢を与える」で答えるオーナー。彼のメッセージは壊れたレコードのように繰り返しである。よく言えば終始一貫だ(悪く言えば馬鹿にしている)。


同じ頃、琵琶湖の向こうでは油野財閥の御曹司が「オイリス滋賀」の発足の記者会見を行っていた。サングラス姿で記者会見に応じる油野オーナー。夢は最強クラブの経営、必要な要素は「最強の選手」、「最強の施設」、「圧倒的な財力」だそうだ。上からモノを言う油野オーナーとフレンドリーを装い、親しみを込め夢を語る筆者。記者団からの評価は明白だ。

次の日の新聞の一面を飾ったのは新チームが2つも関西地方で発起されたこと。記者団は2チームをライバルチームと位置づけた。が、記事の内容は偏っていた。そう、その偏りは、それぞれのビジョンとオーナーの口調の違いから生じたモノであった。

秘書である日比野愛が朝刊を片手にオーナー室をノックする。「オーナー、我がチームにとって非常に好意的で素晴らしい記事ですね。オイリスは批判的なトーンで書かれています。ただ・・・一つだけ気になることが」
「何だね?」
「広報部長が先ほど辞表を出しに来ました。何でも『私は役立たず・・・』と呟いていたとか」
「そうか・・・。仕方が無い。受理しておけ」
「いいんですか!?」
「日比野君、私は前から彼女は要らないと考えていたんだ。元々「私の上司だった」という事実を利用して天下ってきたような使えない人材だ。今だから言うが、甘えがあったんだよ、彼女には。私ほどのカリスマ・コミュニケーション能力と戦略プラニング能力を持っている人材には広報部長など用は無い。必要なのは記者会見などを手配してくれる現場のリーダーとなれる優秀な人材だよ。そう、私には日比野君、君のような人がいてくれれば良いんだ(日比野の顔が赤くなる)。広報部長には申し訳ないが、彼女のポジションは今後私が兼任するから、辞表を受理してくれたまえ。退職金は・・・そうだな。100円でいいだろう。所詮縁の切れ目が金の切れ目。以前は広報本部長として活躍していたんだ。元の会社からガッポリと退職金を貰っているに違いない。・・・ところで日比野君。今から今後当社の経営陣として必要な役職陣営を言うからそれを書き留めてくれるか?」
「ハイ。」
「まずはオーナー!これは私が行う。続いてオーナー補佐!これを君にやってもらう!」
「ハイッ」
「そして営業本部長!これを新規に公募する!営業は重要だ。この役職にはスポンサーを探すこと、チケット販売、グッズの開発、サポーターの管理をお願いする」
「ハイっ!」
「以上が経営スタッフだ。3人だけでこの1年間を乗り越える!ちなみに言っておくが、営業本部長のポジションは1年限定とする。1年でその役職を自ら不必要とするような人材が欲しいっ!分かるかね、日比野君」
「え・・・?」
「つまり、だ!たったの1年間でスポンサーが自ら我がチームにスポンサリングしたい、チケット業者がうちのチケットを売らせて欲しい、グッズ屋がグッズを作らせて欲しいと言ってくるようになるまで私はチームを育て上げるというビジョンがあるのだ!そしてサポーター自らサポータークラブを発足し、自分達で自分達を経営していくと言うようになる。この1年でチームをそのレベルまで作り上げなければいけないと言うことだ!分かったかっ!!」
「ハイッ!!」
「営業本部長となる人間には先に言っておけっ!1年間で無くなるスポット的な役職であることを。その代わり成功した暁には優に1生分の報酬を約束する。その後は君がその役職を兼任するんだ、いいなっ!」
「ハイっ!」
「日比野君。私のビジョンのスケールに徐々に気付いてきたかね?」
「はい。記者会見で言っていたこととは別世界のような気がしてきました」
「そう、別世界といえば別世界。いや、次元と言った方がいいかもな・・・」
ニヤリを笑うオーナー。そして彼の口から恐るべきビジョンと戦略、そしてプランが発表される。
ビジョン:『神戸の子どもに夢を与えること』
マスコミ・サポーター用スローガン:『頑張ろうぜ!神戸』
チーム内スローガン:『いつでも成長・いつでも反省』
原則:
選択と集中の原理に基づく投資展開。
②神戸の子どもを起点とした活動。
戦略:キッズ神戸を日本のレアルマドリッド(あるいは読売巨○軍)となる。
時系列プラン:
① スタジアムの拡大による収入増まで徹底したコスト削減。
② 収入拡大の次には設備と地域、そして1人だけのスタープレーヤーへの投資集中。
③ 設備と地域が整ったら、プレーヤーへ投資。レアルマドリッド化を目指す。J1、世界戦など全ての試合にブッチギリの勝利(もしくは勝つまでリセットボタンの連射)。
戦術:
① 選手・監督・スタッフの完膚なきまでの高い満足度とその維持(満足度が高い奴ほどパフォーマンスが高いと想定)
② 地域へのボランティア活動の義務化。
③ その他サポーターへの献身的な活動。


秘書の日比野が目を見張り、オーナーを見る。オーナーは情熱という志を抱き、空を見ている。



・・・あの日から早31年。「キッズ神戸」も設立31年が経つ。

設立1年でJリーグに昇格。2年目でJリーグ制覇。同年アジアカップ制覇。6年目にヴィクトリーカップ制覇。8年目にスタジアムが15万人クラスとなる。同年中山ゴン入団。15年目スーパーカップ(世界イチ統一戦)にてレアルマドリッドを下し制覇。以降Jリーグ、スーパーカップを毎年制覇。16年目、オーナー日本代表の監督に選ばれるも拒否。曰く「オーナーとしての仕事は選手の活躍を通じ神戸の子供達に夢を与えること。私が活躍してどうするっ!!」とのこと。そして現在・・・。



(下記読み飛ばし可。要するに今をときめくJリーガーと過去の英雄が多いぞ、ということ)
チームのフォーメーションは3−5−2DVのサイドアタック.要するにこんなフォーメーション:
     FW  FW

SMF   OMF SMF

    DMF DMF

 CDC   CDF  CDF

       GK
 

チームメンバーは以下の通り。赤字は本日の主役3名。:
注:年齢の右のカッコの言葉はレベルを示している。神==>屈指==>完全==>十分の順番(それ以下もあるが、このチームにはそんな選手は存在しない)

FW(フォワード)
エレ(言わずと知れたサッカーの神様ペレ)35歳(神)
河本鬼(日本が誇る世界のストライカー釜本)38歳(神)
高原(飛行機乗りすぎで日本代表を蹴った男)27歳(神)
ルンゲ(ドイツが誇る世界のポストプレーヤー)28歳(神)
中山ゴン(転生してきたカリスマ)20歳(十分)

OMF(オフェンシブミッドフィルダー
中村俊輔(幻の左足を持つ男)39歳(神)
奥大介(天性の才能を持つJリーガー)29歳(神)
グラーフ(オランダが誇る神様)27歳(屈指)
中田ヒデ(日本のサッカーを変えた男ヒデ)27歳(屈指?留学中120日後帰国)

SMF(サイドミッドフィルダー
石川(Jリーグ屈指の右サイドのドリブラー)21歳(完全?留学中120日後帰国)
デュキャナン(ゲームオリジナルキャラ)21歳(完全)

DMF(ディフェンシブミッドフィルダー
稲本(オレオレオレ様)21歳(十分)
中田浩二トルシエ大好き)32歳(神)
名波(ジュビロのMF)27歳(屈指)
山田卓(ヴェルディのMF)39歳(屈指)
服部(ジュビロのMF)22歳(十分)

SDF(サイドディフェンダー
都並(元全日本)32歳(屈指)
御厨(ゲームオリジナルキャラ)35歳(神)

CDF(セントラルディフェンダー
萩原(ゲームオリジナルキャラ)33歳(屈指)
森崎(ゲームオリジナルキャラ)26歳(完全)
長尾(ゲームオリジナルキャラ)27歳(屈指)
井畠(元横浜の井原)19歳(十分)
バウアー(ドイツが生んだ皇帝)22歳(完全)
(ユースに柱谷)

GK(ゴールキーパー
河本龍(ゲームオリジナルキャラ)32歳(屈指)
曽ヶ端(アゴが気になる全日本のGK)21歳(完全)

合計25名(外人枠5枠)。

(以上読み飛ばし部分終了)

「失礼しますッ」オーナー室の外から声が聞こえる。筆者は現実の世界に戻された。入ってきたのは幻のレフティことファンタジスタ中村俊輔だった。
「やぁ俊輔君。君の長年の貢献には本当に頭が下がる想いだ」
「恐縮ッス!」
「君の左足から繰り出されるフリーキックには何度も助けられたよ・・・」
「ありがとうございますっ!」
「ところで君の記憶力をテストしたいんだが・・・。」
「へっ?」
「いや、何、君は私の友人の1人に似ているんだよ。その男は3歩歩いたら物事を忘れる健忘症の子でね。ハッハッハ(つられて俊輔も笑う。オーナーの顔が真剣になり)君がウチのチームに来たのは・・・?」
「20年前です。当時イタリアのレッジョカラブリアというチームに所属していたのですが、スカウトからオーナーの夢を伺い、その夢に自分も奉仕したいと思ってそのチームを蹴ってまで入らせていただきましたッ!」
「そうか。それはご苦労だったね。(目が光る)で、君はその志、達成できたのかね?」
「えっ・・・?」
「つまり、君は神戸の子供達に夢を与えることができたのかね?」
「は、ハイ。プレーを通じて、ですが。」
「そうだね。それ以外でも社会的活動で君は名声を受けているよね。」
「(嬉しそうに)ええ。ファンレターを頂いたこともあります」
「そうか。ただねぇ。君に聞きたいことがあるんだが・・・」
「はい。何でしょうか?」
「ファンは、君の年俸を知っているのかね?」
「えっ?」
「君との契約が切れた3年前。君の口から『引退』という言葉を言うのかと心配していたよ。でも君の口から出た言葉は『アシスト王を取ったから年俸を3倍にしてくれ』だったよね?私はタイトル料として1年契約を結んだ。その契約が切れた1昨年。1月の年俸交渉のとき君は「あと一年だけ現役をやらせて欲しい」といったよね?当時君は38歳。世間一般で言えば潮時だ。私は迷わず支払ったさ。2倍の年俸を。今までの貢献として。そして今年の1月。君は引退しなかった。39歳にも関わらずだ。私は君と1年契約を交わした。そう、君の引退は他の選手の能力を活性化するからね*。・・・私の言いたいことが分かるかね?」
注:繰り返すと、ある選手が引退すると、若手の選手の能力が爆発しレベルアップするときがある。そのためベテランは引退させるに限るのだ。
「・・・引退しろということですか?」
「ハッハッハ。私はそんなことは言ってないよ。私は我がチームメンバーを家族と思っているしね。いつまでもフィールドに立っていて欲しいと思っているさ。そう、皆にね。ほら、目を閉じてごらん(俊輔、目を閉じる)。君の勇姿が目に浮かぶだろう?そう、君はいつまでも皆の心のフィールドに立っているじゃないか?」
「・・・それは私にはスタメンはもう無理、という意味ですかっ!?」
「違うよ。俊輔君。君は我がチームの英雄じゃないか。ただ、周りを見てごらん。君のポジションには神レベルの奥大介、世界の名プレーヤーのグラーフ、そして留学中の中田ヒデもいる。君は彼らにベテランとしての教育をしているのさ。そう、ファンには内緒の13億5000万という授業料でね」
「っく・・・。(悔し涙を目に浮かべ)オーナー。私の年俸が仕事と合っていないとでも?」
「それは君が答えを出せばいいじゃないか。私はそうは思っていないけどね。君は「あと1年、あと1年」と繰り返し、現在では2軍だけれども、チームで3番目に年俸が高い。そう、サッカーの神様エレ(ペレ)、エースの河本鬼に次いでね。1,2,3とは縁起が良いネェ。ハッハッハ(俊輔、悔しそうに唇を噛み締める)。いいかい、俊輔君。君はこのチームが軌道に乗せる為に一生懸命頑張ってくれた。私はいつまでも君にフィールドに立っていて欲しいし、サポーターもそう考えている。ほら、目を閉じると君の司令塔としての活躍が目に浮かぶ。が、そろそろ若手にもチャンスを与えてあげないと。チームの皆がフィールドに立つことができないしねぇ。4ヵ月後には中田ヒデも帰ってくるしな。グラーフ君も闘志を燃やしているしな。大丈夫。君が生まれ変わっても*、私は君を必ず我がチームに呼び寄せるよ・・・。私の話はこれでおしまいだ。もう行って良いよ。今までご苦労さん。」
「っく・・・。失礼します。」
俊輔が泣きそうになりながら退出する。
注:中山ゴンのように一度引退した選手が蘇生し、元々所属していたチームに戻ることがある。

中村俊輔。当時ナケナシだった我がチームに年俸5000万円で来た男。チームの司令塔として活躍。左足から繰り出すファンタジスタフリーキックでチームに勝利をもたらした天才。39歳で成長が完全に止まったこのファンタジスタにはチーム内スローガン『いつでも成長・いつでも反省』は似合わない・・・。早く引退して欲しいものである。




「コンコンッ」ドアを叩く音がして顔を出したのは日本が誇る世界のエースストライカー、河本鬼だ(オリジナル:釜本)
「失礼。呼んだか?」
「やぁ、エース。元気かね?」
「ふっ、照れるぜ、オーナー。ゴマするのはやめてくれ」
「いやぁ、さすがは世界のエースだ。君は我がチームに来て何年経つ?」
「15年だな。当時J2の新潟のチームにいたんだ。24歳のオレを世界一のこのチームがスカウトしてくれた」
「もうそんなに経つか。時が経つのは早いなぁ。その間どれだけタイトルを稼いだんだっけ?」
「・・・確かJリーグ得点王が10回だったかな?Jリーグベストイレブンは14回。JリーグMVPと世界MVPが3回。アジアベストイレブンと世界イレブンがそれぞれ10回と7回だったな」
「さすが(過去の栄光に浸る男)だな。先日留学より戻った高原が『河本さんに憧れて入団を決めた』と言ってたし、ルンゲは『ドイツでも毎日KAWAMOTOの名前を聞いた』と言っていたぞ」
「照れるぜ」
「君ももう38歳。今年で契約が切れてしまう。君には彼らの教科書としてこれからも頑張って欲しい」
「(顔をこわばらせ)・・・どういう意味だ?」
「(豹変するオーナー)分かるだろっ?ワカラネェってのか?教えてやろうか、ボケナスがっ!?」
「・・・(戸惑い無言になる河本鬼)」
「耳の穴ほじくり回してよーく聞きやがれってんだ!38にもなってサッカーしかやったことねぇくせに1年に14億1000万円も稼ぎやがって!良い身分だな、サッカー馬鹿さんよ!だがよ、お前引退後の生活考えてんのか?」
「そりゃこのチームの監督として・・・」
「誰がサッカー馬鹿の教えを請うと思ってんだよ、このチ○カスがっ!お前、引退選手がコーチになったときの年俸知っててそう言ってるのか?引退した年の半分だぞ、このアホンダラ!誰がサッカー馬鹿の教えるコーチングに7億飛んで500万も払うんだボケッ!何だ、そのハテナ顔は?「飛んで」が分かんなかったのか?お前みたいな飛躍的な脳みそを持ってる奴のことを指してんだよ!」
「オ、オーナー。怒ってるのか?オレは知らない内にオーナーを怒らせていたんだな。す、すまん」
「お前は耳の聞こえない男か?源次郎か*?ボケッ」
注:キャラメルボックス「TRUTH」の主役の役名。
「源次郎って何だ?」
「こっちの話しだ、田吾作がっ!とにかく分かったか、コンニャロメ!お前が引退しても雇ってやらねえぞ!早く転生してウチのスカウトの餌に喰いついて来い!*」
注:新人としてスカウトに食いついてくると、入団時は年俸500万円。色々な裏ワザを使っても引退時に年俸は1億円程度。他のチームから引っ張ってくると河本鬼クラスだと引退時は10億を超える。

オーナーの説教は続く。

「年俸14億も貰っておいて、今シーズンの折り返し地点にも関わらず、お前は得点ランキング3位じゃネェか!ボケがっ!!1位のエレに負けるなら分かるぞ、同じフォワードだしな。だが、2位の奥大介に遅れを取ってるってことはどういうことだ!?ストライカーのくせしてアシストばっかしやがって!お前に期待することは唯一つ!点を取ることだ!分かったか!じゃなけりゃ、高原と変えるぞコンニャロメ!それとな、今年の引退時、お前がコーチになりたいと言ったとき、何か特別な能力を持ってることを見せてみろ!じゃなきゃ、速攻クビだぞ、サッカー馬鹿が!出てけっ!」
スゴスゴと出て行く河本鬼。サッカー馬鹿の記憶メモリーのキャパは低い。多分彼に伝わったメッセージは ①オーナーが怒ってた、 ②そんなオーナーが「今年の引退時」と言っていた、の2点に違いない。これで彼の今年の引退は間違いない。そしてサッカー馬鹿のみが覚える幻のコーチ技「サカつくプレイ」を覚えてコーチに転生するに違いない(しなければ殺すっ!)



「失礼します」
続いて訪れるはヴェルディ出身の山田卓。略して山卓だ。この男、長年キッズ神戸の中盤を守るドレッドヘアー野朗である。どことなくオレンジレンジのラッパーに似ている。が、既に39歳。今年こそ引退してもらいたい逸材である。
「やぁ卓ちゃん。どうよ調子は?」
「長年コンビを組んでいたシンジさん(小野シンジ)が去年引退して、寂しいっす」
「そうか。君も去年引退してしまうのではないかと気が気じゃなかったよ」
「それは大丈夫です。俺、生涯現役っすから」
「それは嬉しい言葉だね。悩み事は他にあるかね?」
「そうっすね。あえて言うなら、最近試合に出れないことっすかね」
「ほう?」
「最近中田浩二と名波がスタメンで、サブに稲本。服部がベンチで俺は2軍じゃナイッスか。何でかなって思って。ほら、稲本と服部は『世界で十分』クラスじゃないっすか(=レベル5を意味する)。俺は『世界で屈指』クラス(=レベル7)。他のメンツとも連携が良いし。なんでかな?って思って」
「連携はチームに長くいれば良くなるよな。君は10年以上いるからそりゃ完璧だ。ただね、君はチーム内スローガンを言えるかな?」
「『いつでも成長・いつでも反省』っすよね?俺、寝言でもそれが出るようになってますよ!」
「ほう。さすがチームに意味もなく長くいるだけはあるね。じゃぁ聞くが君は『いつでも成長・いつでも反省』を実現しているか?」
「・・・」
「何だ?突然無言か?・・・じゃぁ私が代わりに答えよう。君は7年前からずうっと『世界で屈指』だ。なぜ「神」(=レベル8。最高レベル)にならないんだ?君はこんなもんじゃない。君の限界はまだまだ先だ。君はもっと行ける!私はそう信じて君を使い続けたよ。シンジと一緒に。・・・シンジは神となり、引退し、今じゃコーチとして立派に活躍している。君はどうだ?」
「・・・いつまで経っても屈指っす。現役にこだわっているっす。」
「私のポイントはそこではない(サッカー馬鹿がっ!)。ただ、ウチのフォーメーションは3−5−2DV。君のポジションはスタメンが2人。5人枠のベンチに多くて2人。この限られた枠は『いつでも成長・いつでも反省』を実現しているに相応しいのではないか、と聞いているんだが?」
「っく・・・。」
「君とは今までずーっと最長契約の5年契約を結んでいた。が、昨年だけ1年契約にさせてもらった。君はその時気付くべきだったんだ。私の意図を。今年こそ『いつでも成長・いつでも反省』を実現して欲しいという思いを。が、君は1年契約ならば、と3倍の年俸である7億4200万を要求した。私としては『今年はやる気だな』と感じ、サインした。ところが、どうだ?折り返し地点の今、君は『いつでも成長・いつでも反省』をしているのか?」
「(体をわなつかせながら)してないっす・・・」
「非常に残念だよ。ウチのスローガン『いつでも成長・いつでも反省』をしていないと自覚する人間を目の当たりにするのは。さぁ、残り半年だ。・・・君には期待しているよ」
「オーナー。これはく、クビってことっすか?」
「私はそんなことは言ってない。クビではない」
「く、クビ?それは狂おしいほど吸い付きたくなるような突起物のことですか?」
「突然何を言ってるんだ、君は?」
「く、クビ?それはピンクだと価値が高くなり、黒ずんでくると価値が下がるものですか?」
「どうした山田君?」
「く、クビ?それは小さければ小さいほど良いとされ、逆にでかくなればなるほど見向きもされないものですか?」
「座布団を持って行く気かね?山田君」
「く、クビ?それは服の上に透けていると異常なまでに興奮するアレですか?」
「しつこいぞ、山田君。君の『いつでも成長・いつでも反省』とはシモネタに目覚めることだったのか?それがお前のTRUTHかっ?」
「っく・・・。失礼します」
体とシモネタの限界が来ている山田卓。残りの半年次第で引退を決意することであろう。

・・・シモネタごときで私は決意を変えることはない。そう、ケツ射を(ぷっ!)

・・・落ち着け筆者。今までお世話になった3人との会話で気分が高まっているのであろう。


筆者は3人と話し終え、目を閉じる。今年の12月。3名を泣く泣く送り出す自分の姿を思いながら・・・。



今後の進展を期待し、一時閉幕。。。