本屋②

世界を股にかけるカリスマ・マーケターこと筆者は、常々マーケティングモデルやビジネスモデルの変換が必要な事例を捜している。そして、先日は、本屋を的にし、本屋を取り巻く環境を特に流通面から観察することで、その腐ったビジネスモデルについてまとめてみた(詳しくは本屋①を見て)。

さて、本日は、カリスマ・マーケターこと筆者が仮にこのような業界で資本金500万円で本屋を経営する、と決めたらどのように経営していくか、という仮定の話をさせていただきたい(あくまで仮定の話。筆者は本屋のビジネスには絶対に手を出さない。何故ならば、そこにマロンがないからだ。そして利益がかなりひくいことが予想できるからだ)






まず、店のロケーション選び。これが必ずと言っていいほど将来を左右する。何故ならば本屋は薄利多売の世界だからだ。客数が多いほど良い。ここはケチってはいけない。






ベストなロケーションは、「消費者が本を買う気できている(冷やかしにこない)」場所。しかも本屋にいる場所が5-10分程度の場所が良い。





よって、新幹線の駅構内が好ましい(例:東京駅、品川、新大阪など)。





さて、場所が決まったところで、コスト計算をして、目標売上数量を決めよう。



バイト料900円*3名(理由後記)*14時間経営*30日としたときに、運用コストは113万円となる。電気代モロモロで20万円。土地代50万円でトータル183万円となる。





返品コストはゼロ、無返品奨励金を狙わないとすると、毎月183万円以上稼いでやっと黒字。単純計算のために、売上げは1冊400円、利益40円とし、発注時のキャッシュフローは考えないことにする。





すると、183万を稼ぐには月に46000冊売らねばいけない。






さて、毎月の目標が決まった。売上げ46000冊だ。






新大阪駅の使用者は年間6000万人とのこと(含むリピーター)。毎月に均すと500万人。単純に言えば1%の人に1冊買ってもらえば黒字と化す(もしくはついで買いの促進)。





そこで戦略とすれば、①店舗の認知の促進、②楽しく便利な買い物環境の提供で(あ)リピーターの獲得、(い)ついで買いの促進(=1冊以上を買わせる)、となる。









そこでまず店舗認知促進のために店頭で製品と出会う瞬間を100m、10m、1mの理論で作って行こう。







本屋から100m離れている箇所に「本屋はココです」とわかるようなドデカイ看板や地図を用意する。屋号も大きく演出したい。







次に10m手前からきたくなるような仕組みづくり。これは立ち読みフリーの週刊誌が望ましい。買う気のない客はここで排除すると共に、「流行ってる」感を演出する。







1m理論は客の導線にも影響するので後記しよう。






さて、店の入り口は週刊誌と決まった。次にレジの場所。







これは当然ながら入り口・出口の周辺が好ましい。万引き防止にもなるし。時間がない客が探し者を聞きに来るときにも便利だし。






レジ周りはクイックショッピングおよび最後の買い物的な製品にとってはゴールデンゾーンである(例:スーパーにとっては乾電池やチューインガムなど)。ココには新聞あるいはその週に出た少年漫画・売れすじの週刊誌などの鮮度品を置きたい。本当に急いでいる人は駅の売店でそれらを買うため、あくまで最後の1品としてのついで買いを促し、鮮度の低いものを売りさばく。





さて、店の導線を手前、左右、真ん中、奥に分けるとする。手前は週刊誌、レジ(&ゴールデンゾーン)となった。
子ども系の漫画ゾーンは左右のどちらかに置く。手前から小さい子を対象に、奥に行けば青年系に発展し、対面は少女系とする。平台には今月出た漫画その漫画の前号、そして流行り物の漫画で攻めていく。もちろん、今月出た漫画のついで買いを促す戦略だ。
ここで返品フリーの魔術を利用する。




そう、運用コストの削減の意味もかね、漫画のラッピング(立ち読み防止用のラッピングーバイトの労力)などは排除する。これにより、時間のない客が「ふっ」と足をたち止め、漫画を手に取る率を高めていく(注:時間がある買い物客に立ち読みをさせてしまうと売上げの削減につながるため、あくまでこのような場所でしか使えない技)。よって、買い物客は立ち読み用の漫画を手に取り、「あ、コレ買おうかな」と思うと、その下に積んである漫画を手に取る。ダメージ品は売れなくなる方程式だ。が、返品コストフリーのため、そんなこっちゃ知ったこたぁない。容赦なく出版社に返品しよう。





さて、このヤクザな漫画ゾーンはあまり大きく場所をとらないことにする。何故ならば、今月出た青年漫画以外はあまり動きがないであろうからだ。が、夏休みなどの少年少女が来店するタイミングでは、厚めに発注し、漫画ゾーンを大きくしたい(どうせ返品罰則ないし)。






さて、真ん中および左右のどちらかは、小説コーナーにしたい。
ここも平台中心で季節性をあおっていく。ここで重要なことは、ある人気の作家が本を出版したら、その作家の古いものも並べてしまう、「作家ツナガリ」店頭プランと小説のオビに統一されている「真夏のホラーフェア」などのオビ色をまとめた平台のどちらも用意することだ。





次に棚。ここは余りビジネスが動かないと言われている。何故ならば目当ての本を棚から探すのは大変だからだ。が、カリスママーケターとしては、この盲点もビジネスドライバーとして改善したい。




棚の分け方は大別すると3パターン存在する。店舗スペースによって異なるが、1パターン、ないし2パターンを採用する店が多い。
パターン1:出版社別パターン。メリット:棚の色統一。デメリット:分かりにくい。
パターン2:作者別パターン。メリット:作者で決める買い物客にとっては非常に分かりやすい。デメリット:棚の色が不統一&xx系で決める買い物客にとっては分かりにくい。
パターン3:xx系パターン。メリット:系列で決める買い物客にとっては分かりやすい。デメリット:作者決め買い物客にとっては分かりにくい。





スペースが限られた店舗にとってはパターン1と2の合わせ技が多く見られる。







筆者の店舗「筆者書房」は資本金が少ないこともあり、狭い店舗であろう。



が、筆者としては、買い物客起点およびついで買いを促すため、パターン2と3を並列に使用する。



まず、店の真ん中は平台で流行りの作者とその作者が出した本で埋め尽くす。そしてその上の棚は、あいうえお順で有名な作者の本をがっつり並べていく。あいうえお順で本を探しに来た人がついで買いをするようにするのだ。




店の左側(右を漫画とした場合)は、系列でまとめていく。店の入り口から季節系、エッセイ系などの爽やか路線で攻める。奥に行くにしたがって人間の欲望系で攻めていく。ビジネスマン・金融系、ヤクザ系、エロ小説系、ホラー系と。ホラー系の反対側は青年漫画となるため、コレレーション(ついで買いの可能性)も強い。


ここの棚の下の平台はなるべく、出版社が用意した統一された帯付き小説を活用し、彩り豊かにしていきたい。



さて、再度店内を見渡そう。


入り口出口側:週刊誌(客寄せ)&レジ&レジ周りには新聞、売れ筋週刊誌&売れ筋漫画
右側:漫画。手前から少年漫画==>青年漫画。対面は少女漫画。平台は売れ筋系。
真ん中:有名作者別の小説の棚。平台は旬の作者の小説&その作者の過去の作品。
左側:系列並びの小説。手前から爽やか==>欲望系。平台は系列で帯を重視で彩り豊かに。


これで薄利多売の中でのマーケティングが100m、10m、1mの理論を用いて出来上がっている。


最後に人材となる。

まずレジに1人は常に置きたい。混雑時は3台フル稼働するくらいが好ましい。


残りの2人は店内配置とする。1人は手前を中心に週刊誌の片付け、立ち読みをそれとなく追放、週刊誌の出し入れ。



もう1人は店内の漫画を中心に出し入れ。長い立ち読みを注意しよう。小説はあまり飛ぶようには売れないないだろうから、整理整頓くらいにしたい。








が、最終的には、買い物客は筆者書房に移動時間の暇つぶしとしての本・小説・雑誌を購入するために訪れている。よって①重くないものが好ましい、②時間が限られている、というところから、小説&週刊誌の購入を促進することが何よりも重要であろう。よって、なるべく少ない時間で小説の購入まで結びつけ、レジ前のゴールデンゾーンで週刊誌を購入することを促すことが最重要課題となってくるのであろう。




こうすることで、毎月500万人が使用する大型の駅で4万6千冊以上を売り切り、利益を獲得する。このようにするには上記のような簡単なマーケティングの知識がなければいけないのだ!


よって、殿様商売をしているそこら辺の地主が経営する本屋など、はっきり言って腐ってほしい、と願う今日この頃である。



一時閉幕。。。