カラフルな君


これはカリスマ的手抜き作者の過去のカキ物をコピペしたもの。
参考(およびネタ元):キャラメルボックス「ミラージュ」、有栖川アリス「幽霊刑事」。





世界を股にかけるカリスマ・メルヘン・ファンタジスタこと筆者は、久しぶりに甘酸っぱい想いに心を煩わせていた。そう、ひっさしぶりのエエ話を書いちゃったからである。てへっ。


ぶっちゃけ、新規顧客を巻き込んじまったに違いない。調子に乗った筆者は、更に筆を固く握り締め、書いちゃうのさ(カクも可)。そう、ブッチギリのメルヘン・ファンタジーを。でも今回はちょっと作風を変えちゃうのさ。いつも通り、ちょっぴり切なくって、それでも微笑ましくって。そこにいれちゃうのさ、更なるエッセンス。


そう、トラジティを。



さらに、今回は自らを高みに持っていくため、あえて自分に挑戦する。やってみな、筆者君、と。




全文独白で書いてみな、と。



筆者の中に芽生え始めた独白好きなキャラクターがそう叫ぶ。お前、独白やっちゃいなよ、と。独白でストーリー書いちゃいなよ、と。舞台じゃないぜ、ポエムじゃないぜ、ストーリーだぜ、と。

読み物における独白とは、ある1人の言葉で説明チックになり過ぎないように、状況を設定し、主人公の性格を描写し、読者の共感を呼び、最後には感情移入をさせるというライターに課せられた最高級かつ最上級の設定だ。はっきり言って独白物に挑戦するライターはマゾ、あるいはポエマーよろしく超自己満の追及者でしかない。そして筆者は今まで独白物でブッチギリの成功作を読んだことがない。そう、これはライター界に対する筆者からの挑戦状として受け止めてもらっても構わない。




若干筆者の中に更なるペルソナが育ちつつある気もするがそれはさておき、物語〜カラフルな君〜。





いざ開幕。。。





「君と出会う前の僕の世界はモノクロームだった。君と出会ってから僕の世界には色が加わった。赤、青、緑、黄色・・・。君と出会って僕は世界に色があることに気付いたんだ。でもそれだけじゃない。君は僕に、音、香り、味、触れ合うことも教えてくれた。そう、まるで無機物だった僕を生き物にしてくれたんだ。・・・でも今の僕の世界はセピア色だ。何もかもが色あせている。君の姿ですら色あせて見える。そんなことはないのに・・・。そんなことないって知っているのに・・・。
・・・知っている?知っていた?知っているべき?
・・・分からない。分かりたくもない。あえて分かっていることを言うならば、僕が混乱している。そして、こんなに近くに君の側にいるのにとっても遠くにいる。僕には君が見えるのに、君には僕が見えない。そして、僕にも君が色あせて見える。そして・・・僕は既にこの世にいない。」





「『今すぐ逢いに来てくれなきゃ別れる!』遠距離恋愛に疲れた君は喧嘩の度に僕に言ったよね。『ハイハイハイ』って僕はよく聞き流した。でもあの日だけは違った。喧嘩の原因は僕だったし、何よりも君を大切に思っていたから、君に内緒で逢いに行ったんだ。君は喜んでくれるに違いない。だってそうだろう?君の25歳の誕生日。付き合ってから丁度3年目の記念日。君には内緒だったけど、実は調べていたんだ。君の指のサイズ。買っていたんだ。大切なメッセージを込めた指輪。」





「あの日僕は急いでいた。気持ちの高ぶりを抑え切れなかった。今すぐ君に逢いたかった。空中をフワフワ歩いているような感覚だった。集中力があるのに、全く周りが見えていない。落ち着いてるつもりなのに歩くペースはいつもより速い。ポケットの中にいれた君へのメッセージ。“Eternally With You”. 日本語では恥ずかしすぎて言えない台詞。英語だと簡単に言えるような気がした。とは言っても、フォーエバーウィズユーだとなんか照れちゃうし、俗っぽいかな、なんて思って似たような言葉を捜したんだ。“Eternally With You”.」




「君の家の目の前。君の部屋を見ると、電気は消えている。時計を見ると12時半。どうせいつものファミレスに行ってるのだろう。僕の頭は不安と緊張で一杯だ。店に入ったら、目の前の席についてやろう。それとも後ろの席の方がいいかな?君の驚いた表情が目に浮かぶ。そのまま指輪を渡すことになるんだろう。僕を緊張が包み込む」





「ファミレスの窓辺に君らしき人が座っている。一歩、また一歩君らしき人に近づく。・・・君だ。いつものパーカーとジーンズ姿。一気に緊張が高まる僕。コーヒーを飲んでいる君。寝れなくなるから夜のコーヒーはあれだけ止めておけっていったのに。遠距離恋愛だからって僕が見ていないと思っているらしい」




「知らず知らずに僕は交差点を渡っていた。赤信号だと言うのに。けたたましいトラックのクラクションの音の後、急ブレーキの音が鳴り響く。この世のものとは思えない衝撃が僕の体を襲う。次の瞬間、僕は無重力の世界へと飛び立っていた。」




「痛みは感じなかった。足元には横たわっている僕。立ちすくむ僕。まるで世界が止まってしまったかのような静寂が周りを包む。突然エンジンの音がする。僕と接触したトラックのエンジンだ。まさか・・・と思うと案の定トラックはその場を去っていってしまった。そう、誰も目撃者はいないのだから。僕とそのトラック以外誰もいない大通りだった。僕は赤信号だったのに通りを渡ろうとしたのだ。責任は僕にある。やりきれない責任とあっけない終わり方をした自分の人生」



「それ以来、静寂が周りを包んでいた。君を見ると、既に席にはいない。徐々にファミレスから人が出てくる。店員、食事が終わった客、そして・・・君。君は恐る恐る横たわっている僕に近づく。君は横たわっている僕を認知したようだ。君の口が何かを呟いている。・・・僕には聞こえない。君が何かを叫ぶ・・・。僕には聞こえない。店員が君を押さえつけ、他の客が救急車と警察を呼び出している。・・・でも僕には何も聞こえない。あのトラックの走り去ったエンジン音を聞いてから、僕は何も聞こえなくなっていた」




「『葬式って白と黒の世界だ』って子どもの頃思っていた。でも、今の僕の目にはセピア色に映る。そう、僕は色の識別ができなくなっていた。線香のニオイも分からなくなっていた。お坊さんのお経も聞こえなくなっていた。もちろん、触ることもできなければ食べることもできない。僕に許されたことは唯一つ。セピア色の世界を眺めていること」




「葬式はスムースに終わった。多くの人が訪れてくれた。君は警察から貰った指輪を手の中でずっと握り締めていた。警察の人も葬式に来てくれた。でも彼らは訪問者ばかりを見ていた。多分、ひき逃げ犯の習性として葬式に訪れるのであろう。犯人探しなのかもしれない」




「その後、君はずっと君の部屋に閉じこもってばかりだった。僕の写真を見ては何かを呟き、そして目に涙を浮かべていた。生気の無い君。僕のことを想ってくれている君。『もう充分だよ、前を向いて生きてくれよ』僕は言いたい。でも僕の声は君には届かない。折角世界で一番近い距離で毎日いられるようになったのに、世界で一番遠い恋愛になったんだ、僕と君は」




「もう一度君に話しかけたい。もう一度だけでいい、君の声を聞きたい。それだけが僕の希望。それだけが僕をこの世界に留めている。僕のことはもう思わなくて良い。僕のことは忘れても良い。ただ僕は言いたい。いつまでも君の側にいるよ、と」




「そんな日々が1週間も続いたのだろう。君の閉じこまっている生活にずっと付き添ってると、僕も日にちの感覚がなくなってきている。電話がなったようだ。君が電話に出ている。受話器の向こうの声を聞き込んでいる君。顔が明るくなる。君が言った。『そうですか・・・』と。」




「突然君の声が聞こえて戸惑う僕。なぜ君の声が聞こえるんだ?疑問が湧いてくる。と、同時に世界に色が戻ってくる。座っているソファの感触が戻ってくる。君の部屋の香りが、テレビの音が。テレビのニュースが速報を流す。『ひき逃げ犯が自首』」と。僕は、受話器を置く君の後姿に声をかける。」




「突然の声に驚く君。一瞬驚いた表情の後、ニッコリ僕に向かって微笑んでくれた。『ずっと側にいてくれたの?』と僕に聞く。頷く僕。僕たちは一歩一歩近づいていく。君を抱きしめようとした瞬間、君の体は僕の体をすり抜けてしまった。振り向く僕。君の姿は、いや僕に見える全てのものが薄らとしてきている。君の名前を叫んだ。でも君は反応しない。君も何かを言っている。でも僕には聞こえてこない。折角また逢えたのに、もうバイバイか・・・・。でも今なら君は僕が見えている。僕は机の上を指差す。机の上に置いてある君へのメッセージが入ったプレゼントを。君はその指輪を手に取る。そして、指輪の裏を見て、僕に向かって強く、微笑みながらそっと頷く。君の口元がそっと動く。『ありがとう。私も』」





「そして・・・。君の笑顔を見た瞬間、僕の世界は真っ暗になった」




一時閉幕。。。