オレ様VSチビ(番外編)―本当にラウンド1

このシリーズは1月23日号、24日号、30日号と長く続いている物である。まとめは1月30日号を読むことをお勧めする。











では、本当に長らくお待たせした、オレ様VSチビ、本当に、いざ開幕。。。。














カーン!
ゴングが鳴り響いた。
高まる歓声。
踊る血肉。
近づく君と僕の距離。
「何もしないから」という君。
「ホント?」とハニカミながら話す僕。
「友達と恋人の境界線ってどこにあるんだろうね?」と聞く君。
顔が赤らむ僕。










これは股、別の話。















ゴングが響く中、審判こと筆者(世界を股にかけるカリスマ。オレ様およびチビの友人。今回のバトルの審判兼アナウンサー)が颯爽と口を開いた。
世界中の女性がウットリするその口。
チビとカーコ(今回のバトルの解説者。半ば職務放棄気味)はウットリとその口を眺めている。
半ば下半身を濡らしながら。












そんなチビを見たオレ様は勝機を見出したのであろう。
手を上げた。
高らかと。
オレ様はメガトンパンチを繰り出した。
がしかし。
筆者をウットリ見つめていたチビの周りは大洪水だった。
オレ様は滑って転んだ。
半ば、カツラが取れそうになった。













筆者は、小さく叫んだ。
か細い声で叫んだ。
世界の中心で叫んだ。













「さっ、君たち、言葉の攻撃だけにしてね。じゃ、時間ナイからサクサク自己紹介していこう。名前と年齢と職業と、好きなタイプと。彼氏彼女のアルナシね」












「え・・・。」
一番ドン引きしているのは、カーコだった。
バトルに参加していないカーコだった。
それまでベカベカ携帯打っていたカーコだった。
携帯を打つ手を止めて、カーコは言った。













「え・・・。」
さっきと同じ台詞だったので、あえなくスルーした。
芸がないのでスルーしてみた。
本日初対面だがスルーしてみた。













「よし、じゃぁお前からだ」
と筆者はオレ様を指差した。
筆者の指はオレ様を指した。
筆者の華麗で長い指はオレ様を指した。
筆者の華麗で長すぎる指はオレ様を指す予定だったが、本当にオレ様を刺してしまった。
筆者の可憐な指はオレ様のビーチクを刺した。
「イヤン」
オレ様は声にした。
歯を食いしばりながら声を出した。
歯と歯の間から声が漏れた。













(奴は防御力がない)
チビは瞬時に発見した。
机の上には先ほど頼んだピザのカケラが1切れ残っていることも発見した。
8切れに割られたピザ。
オレ様が既に3切れ食べ終わっていることを発見した。
チビはまだ1切れしか食べていなかった。
周りを見ると、カーコはベカベカ携帯を打ちながら2切れ目のピザをムシャムシャ食べていた。
オレ様3切れ。
カーコ2切れ。
チビ1切れ。
元々8切れ。
テーブルの上には1切れ。
と言うことは・・・。
チビは筆者に視線を合わせた。
このカリスマは1切れしか食べていない。
最後の1切れの勝負。
それは私とカリスマとの対決・・・。
カリスマこと筆者の目線が最後の一切れのピザに向けられる。
チビの視線も1切れのピザに向けられる。
2人の視線が再度出会った。
(このピザは渡さないわよ)
(ちょ、俺も喰いたいし・・・)
2人は風を切るように最後の一切れに手を伸ばした。















「で、俺の名前なんだけど・・・」
とオレ様は自己紹介を始めた。
最後の1切れのピザを頬張りながら。














「ちょ・・・」
筆者とチビは口にした。
「おぉっと。テーブルの上のピザを半分食べながら、オレ様の自己紹介が始まった!!正に世紀末の暴君とはこのことか!?・・・どうですか、筆者さん?」
カーコはベカベカ打っていた携帯の手を止め、気が向いたので解説を始めた。
口からピザソースのオイニーを漏らしながら。
「くっ・・・」
カリスマ・解説者こと筆者は悔し涙とハンケチを噛み締めながら、嗚咽を洩らした。














(こいつ、やるな・・・)
チビは悟った。
俺のものは俺のもの。お前らの物も俺のもの。全てはオレのために。それが彼の生き様・・・。













オレ様のイケテナイ自己紹介は続く。
高級車に乗っていること。
ガソリンはハイオク以外入れた事がないこと。
成金の町に住んでいること。
フランス人に支配された日本メーカーに勤めていること。
そのメーカーがイケテナイこと。















「コンパにて会社の愚痴。彼は一体何を求めているのか・・・?」
チビの母性本能がくすぐられた。
思わず膝元がくすぐったくなった。
ちょっと膝をかいてみた。
すると。















膝元付近にオレ様のはいていたパンタロンのスソがまとわりついていた。



















(この男、トークだけでなく、ファッションも切れている)
テーブルの上のイカソーメンが切れていないことに気づきながらチビは思った。
イカソーメンが切れてないのに、ファッションが切れてるなんて。
チビは運命の皮肉を感じた。













長く感じたあっという間のオレ様の自己紹介が終わった。
テーブルの上には穴子の1本揚げが届いていた。
(アカン、このレストラン、イケテヘン・・・)
チビは使い慣れていない関西弁で呟いた。
穴子は見事なまでに一本揚げであった。
切り目はこれっぽっちも見えなかった。
天ツユも一つしか来ていなかった。















穴子の天ぷらは塩だろ)
世界を股にかけるカリスマ・酒好きこと筆者は塩にロックオンしていた。
この店の塩は奄美の天然塩を使用している。
穴子を4等分し、自分は塩で食すことをカリスマは決めていた。
















カーコはベカベカと携帯メールで相談していた。
ママと相談していた。
穴子の一本揚げ。
人生の初めての経験。
ママに相談するしかないだろう。
カーコはママと相談していた。
カーコママは「穴子には梅塩が一番よ」と優しく娘にアドバイスした。
カーコはママの優しさで気持ちが高まった。
と同時に運命の皮肉を感じていた。
この店には梅塩がないからだ。
カーコはそっと涙を拭いた。

















「お前ら食べないのか?じゃぁオレが喰ってやる」
オレ様は器用に穴子の一本揚げを箸で持ち上げた。
そしておもむろに天ツユに入れた。
穴子は天ツユの中で泳ぎだした。
「お前らはイラン!」
オレ様は大根おろしとショウガを蹴散らした。
そして。













「美味い!」
と一口で食べきった。
穴子の一本揚げを一口で飲み込んだ。
ちょっと卑猥な表情だった。
チビはエレクトしかけた。
筆者はハンケチを噛み締めた。
カーコは携帯でママンに告げ口した。















それ位、オレ様は暴君であった。
















ラウンド1.『オレ様の自己紹介』。
攻撃力:100
チビに与えたダメージ:30(防御力と素早い身のこなしであまりダメージを負っていない)
カーコに与えたダメージ:100
筆者が喰らったダメージ:2000














おなかが空いて瀕死の筆者を尻目に
一時閉幕。。。