サトルの詩2

これは世界を股にかけるカリスマ・創作家こと筆者が自分を追い込みすぎた結果、書き始めた苦肉の1000%オリジナルな全10話予定のストーリー。それでは「創作系」サトルの詩、いざ開幕。。。

前回までのあらすじ(詳細:2月20日号):深海魚面の高校1年生サトルは、ふくよか系(と言えば全国のふくよか系から叱られる)の幼馴染トシコの友達リカコ(スレンダー系の美人)と出会い、一方的な恋に落ちた。トシコのセットアップで映画を一緒に見た二人。そして・・・。

サトル:なぜだかは分からないけれども、去年からこの地域に住む人は、携帯電話やパソコンを所持すること、そしてそれらを使用することを禁じられるようになりました。でも僕は携帯電話なんて持っていなかったし、母は「所持や使用しなければ年間で信じられないくらいの税金免除が受けられる。助かった」と言っていました。・・・でも困った。僕は彼女への連絡手段がないからです。周りのガールフレンドを持っている奴らは皆、自宅への電話を避け、直接あったときや暗号で次のデートの約束をしているらしい。僕は、彼女の自宅の電話番号は聞いていなかったし、次に会う約束をする間柄でもなかった。・・・夏休みが終わり、僕は偶然を装ったけれども、彼女の下校中に勇気をだして声をかけました。そして・・・。僕たちは登下校中にすれ違ったらちょっとだけ話をするようになりました。
サトル:それでも、僕の想いは日を追うごとに募っていきました。衝動的に何度か想いを伝えようと思ったこともある。でも僕は言わなかった。いや・・・。言えなかった。
サトル:そんな日が経過して・・・。僕は勇気を振り絞って、彼女への想いを告げる日がやってきました。

(舞台にトシコが現れ、サトルに話しかけてくる)
トシコ:サトル、どういうこと?告白することにしたって?
サトル:ちょ、声が大きいよ。
トシコ:あんた、何か勘違いしてない?
サトル:どういうことさ?
トシコ:はっきり言って良い?(サトル頷く)あんたとリカコ、つり合ってないって。いい?リカコは100人の男がいたら100人が振り返るくらい美人じゃない?あんたはどう?そこまでカッコよくないでしょ?
サトル:お前、キッツイこと言うなぁ。
トシコ:だって絶対断られるに決まってるって。いくらリカコが彼氏がいないとしたってさ、つり合ってないよ。
サトル:確かに外見的にはつり合ってない(と自分の深海魚面を触る)。それは僕だって嫌になるくらい分かっているつもりだよ。でもさ、俺、こんな気持ちになったのは初めてなんだよ。
トシコ:それが恋してるってことでしょ。そりゃオメデトウだけどさ、断る方の身になってみなよ
サトル:お前、断ることを前提に話しを進めんなよ。
トシコ:だってさぁ。
サトル:お前、リカコちゃんの心境とか聞いてるの?俺のこと気持ち悪いとかって言ってる?
トシコ:リカコはそんな子じゃないよ!外見で判断するような子じゃない!
サトル:お前、言ってることメチャクチャじゃんか。外見的につり合ってない、ってお前は言うけど、リカコちゃんは外見で人を判断しないって言っている。お前が外見で判断しているんじゃないのか?
トシコ:違うよ、たださぁ。
サトル:何?もしかして、リカコちゃん、俺のことがキモイって言ってるの?性格的に?
トシコ:言ってないよ。
サトル:じゃぁ良いじゃんか。俺は自分の気持ちが抑えられないんだ。俺だって望みが薄いことは分かってる。でもさ、お前以外で俺に話しかけてくれる女の子ってリカコちゃんが初めてなんだ。こんな出逢いってまずナイしさ。彼女と一緒にいたいんだ。
トシコ:友達関係じゃ駄目なの?
サトル:駄目じゃないんだけどさ、俺の気持ちが溢れているんだ。その気持ちを伝えたいんだ。
トシコ:そんなの自己中だって。
サトル:もういいよっ!!ちょっとは応援してくれよ・・・。
トシコ:ゴメン・・・。
サトル:(観客に向かって)トシコの言っていることはよく分かります。確かに彼女と僕はつり合ってないかもしれない。でも僕はこのこみ上げてくる気持ちの高まりをどうしようも出来なかった。(トシコに向かって)なぁ、応援してくれる?
トシコ:・・・分かった。


サトル:(観客に向かって)そして彼女の下校時間。僕は偶然を装い、彼女と会いました。
リカコ:あ、サトル君。元気?
サトル:うん・・・。
リカコ:(サトルの顔を覗き込み)なーに?元気じゃないじゃん。どうしたの?
サトル:実はさ・・・。話したいことがあって。
リカコ:話したいこと?
サトル:うん・・・。今ちょっと良い?
リカコ:うん・・・。(と2人は公園のベンチに腰掛ける。そこへジョギング中のケンイチが通りかかる)
ケンイチ:おぅサトル!

サトル:(観客に向かって)トシコに止められてからというもの、何か悪い予感がしていました。今日は言うべき日じゃないのかもしれない・・・って。でも、もしかしたらこの予感は僕が臆病になっているだけなのかもしれない。そう思えるようになれたので、僕は想いを告げると決めていました・・・。(ケンイチに向かって)や、やぁ。
ケンイチ:うおっ!誰だよ、この美人は?紹介しろよ!
サトル:(観客に向かって)彼はケンイチ。高校で知り合った友達です。彼は馬鹿が付くくらい自分の気持ちに素直な奴です。そんな彼の性格は、ガサツで恨めしくもあったが、今日ばっかりは羨ましく思えました。(ケンイチに向かって)え、あ、彼女は・・・。リカコさん。僕の・・・友達。
ケンイチ:(リカコに向かって)俺、ケンイチ。サトルの同級生。ヨロシクな。
リカコ:よろしく。ジョギング中?
ケンイチ:あぁ。県大会への体作りって奴?
サトル:(観客に向かって)そうなんですっ!ケンイチは見ての通り容姿端麗。しかもスポーツ優秀。野球チームはキャプテンで、エースで4番という嘘のような本当のポジション。一つだけの難点は・・・頭が弱く勉強ができないこと、かな。

リカコ:じゃぁまたねっ!
ケンイチ:あぁ!(サトルに向かって)悪かったな、邪魔して!
サトル:えっ?(ケンイチが去った後で)ごめん、ボーっとしていた。何だって?
リカコ:(クスクス笑いながら)もう、どうしたの?サトル君?「サトル君と話しがある」って言ったら「あ、そうか、そんじゃーな」ってさっきの人が言ってたじゃない!
サトル:(観客に向かって)「さっきの人」!!今、言いましたよね、「さっきの人」って。よかった・・・。彼女にとってはケンイチなんて「さっきの人」なんです!!
(リカコが退場する代わりにトシコが現れる)

トシコ:・・・それで?結局何も言えなかったの?
サトル:「言えなかった」じゃなくって「言わなかった」だ。お前、僕の話し聞いてたか?
トシコ:聞いてたよ。結局言えなかったんじゃない。
サトル:違うよ!・・・いいか?僕は確実に彼女に近づいているんだ。今日、僕は彼女が外見を気にしていないことを知ることができた。だけど、もしかしたら、お前が言っているみたいに、彼女に言うのは若干早い。だから、もっと互いの性格を知ってから、告白することにしたんだ・・・。
トシコ:で、その第一歩として、私と話してるって訳ね?彼女と話すべきなのに。
サトル:いや、何か告白するんじゃないか?されるんじゃないか?って言う雰囲気だったから、その場では言わなかっただけさ。また明日にでも話しかけてみるよ。
(諦めたようにトシコは歩き始め、舞台から消える。サトルだけが舞台に残り、観客に向かって話し始める)
今から思うと、この時にちょっとだけでも勇気を奮って自分の想いをリカコに伝えれば良かったかもしれません。
(とサトルはポケットから詩を取り出す)
『三文字の言葉』
君に伝えたい言葉。それはたったの三文字の言葉。何も考えていないようで意味が深い。軽いようで力強い。古今東西誰もが使ってきた言葉。誰しもが口に出した言葉。希望という名の光を見ながら、勇気と言う名の武器を心に。たった三文字の言葉。「好きだ」という三文字の想い。

サトル:(観客に向かって)言うことは簡単かもしれない。「彼女は外見のギャップなんて気にしていない」。そんな希望が僕を照らし続けている。トシコに文句を言うんじゃなくって、リカコに直接想いを伝えれば良い。でも、僕には勇気がなかった。彼女が僕をどう思ってるのか知りたかった。彼女の好みを知る前に告白するのは早すぎる。僕はそう思っていた。・・・そんなことを考えているうちに、次の日になってしまいました。