サトルの詩3

これは世界を股にかけるカリスマ・創作家こと筆者が自分を追い込みすぎた結果、書き始めた苦肉の1000%オリジナルな全10話予定のストーリー。


それでは「創作系」サトルの詩、いざ開幕。。。


前回までのあらすじ(詳細:2月20−21日号):深海魚面の高校1年生サトルは、ふくよか系(と言えば全国のふくよか系から叱られる)の幼馴染トシコの友達リカコと出会い、一方的な恋に落ち、告白することを決心した。告白直前にイケメンの友達ケンイチが通りかかったが、リカコがケンイチを気にしていないことを確認した。リカコが異性の外見に重きを置いていないことや今は告白するのに早すぎると感じるサトル。そしてリカコの思いを知る前には告白しない、とサトルは決心した。




(舞台にケンイチが現れ、サトルに話しかけてくる)
ケンイチ:サトル!昨日の彼女。超綺麗じゃん!!いいねぇ、彼女!!・・・名前何だっけ?
サトル:リカコ・・・。
ケンイチ:そう、リカコチャン!いや、リカチャン!いやリカリン!リカ!嗚呼、もう何だっていいや。
サトル:(観客に向かって)こっちこそ何だって良いや!(ケンイチに向かって)で、何?
ケンイチ:サトルちゃぁぁん!(とサトルの肩に手を回す)
サトル:何だよ、馴れ馴れしいなぁ(とケンイチの腕を払う)
ケンイチ:サトちゃん!俺の救世主よ!聞いてくれ!・・・助けてほしい!
サトル:は?助けるって?
ケンイチ:いやサァ、俺、彼女にぞっこんなわけよ。
サトル:彼女?
ケンイチ:リカチンのことよ。
サトル:はっ?
ケンイチ:まぁ聞けって。
サトル:(観客に向かって)これが聞いてられますか!?
ケンイチ:昨夜、俺はいつも通り練習に明け暮れてたわけよ。でもさ、彼女のことしか考えられなかったんだ。
サトル:(観客に向かって)僕なんていつもそうだ!
ケンイチ:で、こりゃオカシイと思ったわけよよ。練習にも身が入らないからチャッチャと切り上げて、家に帰って風呂に入ってもそう。ベットに寝てもそう。彼女のことで頭がイッパイなわけよ。
サトル:(観客に向かって)君はたったの1日。僕なんて夏休み前からずっとだぞ!
ケンイチ:で、俺は思った。男ケンイチ、告白するしかないってね。
サトル:ハッ!?
ケンイチ:で、問題が発生した。
サトル:彼女のことを知らない、とか?
ケンイチ:そう、さっすがサトちゃん。だけど、それだけじゃないぜ。
サトル:(観客に向かって)君の単細胞さ、だろ?
ケンイチ:俺は馬鹿だ。
サトル:(観客に向かって)当たった!
ケンイチ:そこで、だ。俺は最高のプランを考えた。サトちゃん、俺のことを戦略家と呼びたまえ。
サトル:(観客に向かって)呼ぶかっての。(ケンイチに向かって)で、どんなプランなんだ?
ケンイチ:解説しよう。
サトル:(観客に向かって)長くなりそうだな・・・。
ケンイチ:いいか、問題は2点。①俺は彼女を知っているが、彼女は俺を知らない。
サトル:(観客に向かって)お前が何を知っているのかが不安だ。
ケンイチ:②俺は馬鹿、ということ。いや、馬鹿ではなくイマジネーションがない、といったところか。いや、それよりも言葉使いが単純ということか。いやむしろ・・・。
サトル:(ケンイチに向かって)問題点は分かったよ。
ケンイチ:そうか。で、戦略家たるもの、既に持っているモノを有効活用しなければいけない。
サトル:(観客に向かって)要するに手抜きってわけね
ケンイチ:俺の持っているモノとは何だ?圧倒的なスポーツ神経。この容姿。そして・・・サトルだ!!
サトル:えっ?
ケンイチ:そう、サトちゃんを有効活用すれば、俺の問題は解決する。要するにだ。サトちゃんの「ポエム」という素晴らしい趣味を使って、サトちゃんは俺の代わりに彼女にポエムを送るんだ。俺の視点で!
サトル:へ・・・?
ケンイチ:彼女は俺のことを深く知ることが出来る。そうすることで問題の2点をクリアすることが出来るばかりか、容姿端麗、スポーツも凄けりゃ馬鹿でない俺がいるわけだ!!
サトル:でも、それは本当の君じゃないじゃないか!
ケンイチ:心配するな。お前のポエムを見ることで俺はお前から学ぶことが出来る。いつの間にやらレベルアップって寸法だ。
サトル:・・・。
ケンイチ:サトちゃぁぁん。分かってるって。見返りだろぉ?
サトル:はっ?
ケンイチ:このプランはサトル君にとってメリットがない。だから協力できないってことだろ。
サトル:(観客に向かって)違うんですけど・・・。
ケンイチ:だから俺は考えた。君のメリットはポエム1つにつきランチ1回だ!
サトル:はっ?
ケンイチ:俺はよく食べる。だから親からメシ代として1日につき昼飯分とおやつ分、そして帰り道分を貰ってる。この恋のためなら腹を空かしても惜しくない!よっておやつ分を諦めることにする!!
サトル:(観客に向かって)僕のお昼代がおやつ分と相当だって。一体どれほどおやつを食べれば気が済むんだ?(ケンイチに向かって)いやそうじゃなくってさ・・・。
ケンイチ:何?じゃぁ帰り道分もつけるのか?ムゥ・・・・。
サトル:でなくって・・・。
ケンイチ:じゃぁ何を貰えばやってくれるんだ!?言ってくれ!
サトル:いや、だから・・・(と観客に向かって)ちょっと待てよ。リカコはケンイチのことを眼中に入れていない。だからケンイチには悪いけど、彼の恋は実らない。僕はリカコのことが知りたくて仕方がない。これってもしかして・・・。(ケンイチに向かって)よし、じゃぁこうしよう。
ケンイチ:よし、そうしよう!!
サトル:まだ何も言ってないって・・・。ケンイチ、僕はお前のために彼女に詩を書く。だけど、彼女からの返事は手紙にしてもおう。つまり、直接話しちゃ駄目だ。
ケンイチ:へっ?何でだ?
サトル:ケンイチ、僕は君のために詩を書くんだ。だから彼女の反応を見なきゃいけない。でも、僕が必ずその反応を見れるかどうかは分からない。だから直接会って返事を聞くんじゃなくって、手紙とかにしてほしい。
ケンイチ:電話も駄目か?
サトル:君は携帯を持っていたのか?(ケンイチ、頷く)じゃぁ携帯慣れしてるんだろうな。じゃぁ手紙とかって言うのも慣れてないんだろうな(ケンイチ、頷く)でも電話とかは駄目だ。僕も一緒に聞けないだろう?それに君が「レベルアップ」する前に直接話したら、ボロが出るに決まってるじゃないか。
ケンイチ:それもそうか・・・。
サトル:だから彼女の返事は必ず手紙の状態で貰うようにする。・・・良いな?
ケンイチ:わかった。で、見返りは?
サトル:別にいらないよ。
ケンイチ:へっ!?
サトル:正直に言うと、僕の詩が人を動かすことが出来るかどうか、自信がないんだ。だから読者、この場合はリカコ、の反応を見ることができるなんて滅多にナイ機会なんだ。これこそが最高の見返りだよ!!
ケンイチ:そうか。よく分からないけど、分かった。じゃぁ早速頼む!
サトル:(観客に向かって)・・・次の日。僕は「ケンイチのため」にポエムを書き、リカコに送ることになりました。
(とサトルはポケットから詩を取り出す)
『色々な色の君』
「君と出会う前の僕の世界に色はなかった。君と出会ってから僕は世界に色があることを知った。嬉しくて意気揚々としている君。悲しんで落ち込んでいる君。朝逢えたらさわやかな風をまとうかのような君。嬉々として、イチョウのように暖かく包み込んでくれる君。僕が君から色を貰った。僕も君に何かを与えたいと思っている」
ケンイチ:良いじゃないの!(とサトルの手からポエムを奪う)
サトル:本当にそう思ってる?
ケンイチ:(文面を見ながら)イチョウが良いよね、イチョウが。そこだけはよく分かるよ。
サトル:・・・そうか?
ケンイチ:よし、早速渡してくるよ!
サトル:ああ。・・・ってどうやって渡すんだよ?
(とそこへトシコが通りかかる)
トシコ:あっサトル!
サトル:よ、よぉ。
ケンイチ:誰?
サトル:あぁ、俺の友達。トシコ。
ケンイチ:よろしく!
トシコ:どうも。
ケンイチ:しっかし、サトルは女友達多いなぁ。昨日のリカコちゃんと言い、トシコちゃんと言い・・・。
トシコ:あれ?リカコのこと知ってるの?
ケンイチ:あ、うん。トシコちゃんもリカコちゃん知ってるの?
トシコ:だって私の友達だよ、リカコ。
ケンイチ:あ、そうなんだ。じゃぁあれか。トシコちゃん経由でサトルはリカコちゃんと・・・。
トシコ:うん、そうだよ。
ケンイチ:ってことは・・・。
サトル:(観客に向かって)何か変なことになってません?
ケンイチ:じゃぁさ、トシコちゃん。会って早々に頼むのもアレなんだけどさ、
トシコ:うん?
ケンイチ:この手紙、リカコちゃんに渡してくれない?
トシコ:手紙?
ケンイチ:そうなんだよ、アレよ、アレ。一目惚れって奴?俺、リカコちゃんにメロリン・ラブなわけよ。
トシコ:へっ・・・?(とサトルを見る)
ケンイチ:で、さぁ。俺、文才がないから、サトちゃんに代筆を頼んだわけよ。文面1回につき昼食1回でさ。
トシコ:そうなんだ・・・(とサトルを睨む。サトルは知らない素振りをする)
ケンイチ:(時計を見て)やべっ。練習の時間だ!じゃ、トシコちゃん、頼んだよ!(と去っていく)
トシコ:・・・あんた、何やってるの?
サトル:い、いや、確かに見た目はおかしいのはよく分かるよ。でもさ、考えてみてくれよ。僕は彼女のことが知りたい。彼女のことを考えながらポエムを書くのは楽しいし。多分、この詩を読んだら、彼女は何かしらの反応をするだろう?もしかしたら喜ぶかもしれない。もしかたらその反対もあるかも。その反応を知りたいんだ。
トシコ:じゃぁアンタがアンタの名前で書いたら良いじゃない。何であんな頭の軽そうな奴の裏に隠れるのよ?
サトル:それは・・・(と俯きながら)。だって、彼女の反応が怖いじゃないか。もし気持ち悪がられたら、僕はどうしたら良いか分からなくなっちゃうよ・・・。
トシコ:アンタ・・・。意気地なしだね。
サトル:そう言うなよ。
トシコ:で、私は何て言えば良いの?
サトル:普通に「サトルの友達のケンイチ君から受け取った」って言って渡してくれたらいいよ。
トシコ:・・・良いのね?(サトル頷く)・・・分かった。
(諦めたようにトシコは舞台から去る。一人残ったサトルは観客に向かって話しかける)
サトル:皆さんも僕のことを「意気地なし」とか「臆病者」とか思うかもしれません。僕も自分自身が嫌になる!だけど・・・。僕にとってこの方法は上手く行く気がしていました。・・・この時点では。