トリノで4回転編

これは、世界を股にかけるカリスマこと筆者が以前に書き溜めたブッチギリの妄想ストーリー。日本中が政治家のネタをそっちのけで金メダルに沸く中、掲載するかしないかをプチ悩んだお話。このカテゴリーの縛りは(あ)思いつくまま創作&執筆。(い)読み返さない。(う)社会的な問題をお題とする、となっている。このBar「カリスマ」とは夜に現れ、困っている人を助ける(?)オアシス。そんな蜃気楼に迷い込んだお客さんの体験談となっている。

と言ったわけで、Barカリスマ系〜トリノで4回転編、いざ開幕。。。














「自信をもって4回転に挑みます」
初日が終わった後、私はインタビューでそう答えた。
だってぇ、そう答えるしかなかったから。
「3人娘」とか言われるようになっても、私たちはバラバラにトリノに向かった。
「3人娘」?
ハッ、冗談じゃない。
私はアイツらと目が合っただけで殺意が湧き上がるくらい、アイツらが嫌いだ。















「情熱」とかほざくSUGURI。
テーマが見つからず、トリノに入って垂れ幕を見てパッと決めただけのテーマ。
私はゲラゲラと笑った。
だってさぁ。
アンタが情熱情熱って繰り返せば繰り返すほど、その能面が滑稽に見えちゃうもの。



















「誰もがもう一度見たくなるような滑り」とかほざくARAKAWA。
思わず失笑よね。
だってさぁ。
誰もが見たくなるのはアンタのしゃくれアゴじゃない?
誰もアンタの滑りなんか見てないからっ!
いつまでの背中仰け反り滑りにこだわってるし。
何か寂しいオバハンの最後の灯火って感じ。




















私?
「氷上に降りた天使」とか「リンクの上のアイドル」とか言われると正直照れちゃうよネ。
だってぇ、私、そんなレベルで終わらないもん。
まぁ、今回、軽く金でも取って、世界へ羽ばたくことが確定したようなもんジャン?
ハッキリ言って、日本とか言うチッコイ国に興味ないし。

















だってそうでしょ?
行ったこともない高校では壮行会とか訳わかんない会が開かれるしさ。
そこにいる男は全員マルコメだし。
ションベン臭いブスたちはジェラってるし。
そんなマルコメとか興味ないんだけど、って言えないじゃん?
だって、MIKI、アイドルだし。
















レベルの低い週刊誌とかもムカツクよね。
やれ「ちょっと肉付きが良すぎる」とか「MIKIの胸ポチ発見」とか。
むかつくんだよね。













肉付きって、SUGURIみたいな能面ガイコツとかARAKAWAみたいなシャクレあご貧弱と比べないで欲しいし。
4回転飛ぶには筋力が必要なんだからっ。








胸ポチって、見たことあんのかよっ、って感じ。
「ポチ」レベルじゃないし、私の!
もうさ、乳首がピンクでちっこすぎるそんじょそこらの女子高生と一緒にしないで欲しいんだよね、MIKIのこと。
MIKI、もう大人だしさ。乳首だって超鍛えてるから、パンピーと一緒にして欲しくないんだよね。
マジで。











話それちゃった、てへっ。











でね、初日迎えてさ、WADA-BENの妻とかいうオバハンがデザインした真っ黒衣装で望んだの。
で、最初のコンビネーション。
ぶっちゃけ、シクッたね。
着地ちょっと失敗してさ。
やべっ、減点かな、とか思ったの。
したら、案の定、ヒクヒクの点数で。
思わず股間がヒクヒクしちゃった、うふっ。
で、その直後のインタビュー。
私はトークの中身を作るよりも先に、おでこのあぶら汗をちょっとケアすることに意識が行っちゃってさ。
そんなインタビューだったから、何も考えなくって話しちゃった・・・。












その日の夜。
MIKI、まだ未成年じゃん?
でもムシャクシャして飲みたかったのね。
酒か男の。
で、選手村をふらついたの。
ちょっと破れかぶれだったの。
えっ?破れかけ?
違うよ、破れかぶれ。
破るものとか、トリノ前、日本の政治家のおっさんに捧げてきちゃった。
ソイツ、「感動したっ」とか言ってんの。
で、言ってる側でイッテんの。
男って超馬鹿だよね、ホント。











で、選手村フラフラしてたら、旨そうな金髪がウヨウヨしてんの。
ちょっと小悪魔っぽく近づいたらさ、「ARAKAWAはどこだ?」とか言ってんの。
あのしゃくれアゴ、外国では人気あるらしくって。
イタ公って馬鹿で見る目ない奴ばっかよね。
で、日本人がタムロってるところ行ったらさ、DOMEとMEROがギャァギャァ騒いでて。
マジあいつらウザイからさ。
フテ寝することにしてホテルに向かったの。











と、そこへ。
突然、選手村の中にイタリアン・バーと思わせるバーが現れたの。
店名はBar「カリスマ」。
アンティーク風の家具で調和されている店内には誰もいなかったけど、めちゃくちゃイケ面の店員が働いているのが見えたの。
MIKI、胸がドキンとしちゃった。
男子が「モッコリしたっ」とか言うじゃん?
多分、アレと同じ。
ちょっと濡れたし。
ちょっと乳首立ったし。
私はフラフラと店内に入っていった。













「いらっしゃいませ」黒いズボンに白いシャツ。
腰の前に黒いエプロンをつけた、めちゃくちゃイケ面の店員が現れた。
彼は身長175cm、体重63kg、軽いウェーブがかかったヘアスタイルと鋭い目つき。
外人とも日本人とも見えるその端正な顔立ち。
タイ人の3パターンの顔つきの1つにありそうな、超イケ面。
股下1メートルはあるであろう長い脚と高い鼻。
鼻が大きい人はアソコも・・・。
今夜、MIKI、彼と何かあるかも、いやあるに違いない、むしろあるに決まってる・・・。
そう思った私は、今夜のターゲットを定めた。















「マジ勘弁です」
と突然、カリスマっぽいトーンで店員は私に話しかけた。
「え・・・?」
「いえ、こちらのお話です。さぁ、コチラへどうぞ」
とカウンターの椅子を促された。










「ギシっ」とカウンターのイスが音を立てた。
「あれ、結構アンティークね」
と私はごまかした。
「あっ、椅子が可愛そうですね」
「えっ?」
「『アイスが似合いそうですね』と申しました」
とイケ面が恥ずかしそうに言ってきた。
多分、アイスがお勧めなのかな?










「アイス・・・?」
「えぇ。ちょっと寒いですが、当店のアイスクリームはイタリア人の選手からも高い評価を頂いております」
と言いながら、この店員は次々とアイスクリームを冷凍庫から出し始めた。
「それって?」
「ジェラードでございます」
と言いながら、まな板のような大理石の上に、アイスを乗せ、軽快なリズムで調合し始めた。
この手法、テレビで最近見かけるアイスクリームバーのやりかただ。
でも私は始めて目の当たりにした。













「このカッペが!」
「えっ?」
「いえ、『コノカッペーガ』、つまりイタリア語で『今しばらくお待ちくださいね』という意味です」
「あ、そうなんですか・・・」
「信じてんじゃねぇよ、ビアッチ」
「えっ?」
「『シンジテン・ジャネェ・ヨビアッチ』、つまり「さぁ、召し上がれ」という意味です」
とイケ面は私の前に見たこともない豪華で美味しそうなアイスクリームを出してくれた。



















「さ、どうぞ」
「・・・美味しい」
「味わかんのか、コラ」
「えっ?」
「『アジワ・カンノーカ、コラ』、つまり「お褒め頂き、光栄です、姫」と申しました」
「うん、とっても美味しい」
「グラッチェ」
とこのカリスマっぽいイケ面は私に微笑んでくれた。
同時に私の気分も暖まって行った。
この人なら私の悩みが分かってくれるに違いない。
そう私は思い、口を開いた。















「ねぇ、今日のインタビュー見た?」
「えぇ、拝見させていただきました」
「・・・どう思った?」
「と、申しますと?」
「私ね・・・」
と私は一瞬黙った。










男って馬鹿。
だからMIKIがちょっと悩んでると直ぐ気にしてくる。
この間(ま)が重要。
MIKI、女優になれるよね。
演技うまいし。
まずはこの男でも落とすとするか。
とMIKIは間(ま)をあける演技をしたの。














「落ちねぇな」
「えっ?」
気がつくと、店員さんはまな板を拭いていた。
どうやら先ほどの調合後、こびりついてしまったアイスを落としているようだった。
「失礼しました。直ぐに磨かないといけませんので。・・・と申しますと?」
「いえ・・・。何かさぁ、MIKI4回転やることを無理やり言わされた感じがしてさ」
「そうでしょうか・・・?ではお客様は4回転がやりたくないのですか?」
「ううん。やりたい」











「じゃ、やりゃぁ良いだろが、ボケ。ガタガタ抜かすな、ブス」
「えっ?」
「『ジャー・リャー・イー・ダロガOK?ガァガタン・カスナ・ウス』。
イタリア語で『皆さんが期待していますし、お客様もやりたい。じゃぁやりましょうよ、OK?』と言いました」
「スッゴイ、店員さん、イタリア語完璧なんですね」
「ウィ・ムッシュー」
「スッゴーイ」
と私は自然とキャピキャピし始めた。
だって、イケ面だし、優しいしっ。



















「さっ、これ以上は明日以降に響きますよ」
と店員さんが優しく言葉をかけた。
「えっ・・・?」
「ほら、もう11時を過ぎましたよ」
「あ、本当だ」
「さっ、お客様」
「え、でもMIKIまだ食べ終わってないし・・・」
と私は目の前のアイスが乗っていたお皿を見た。















なかった・・・。
いつの間にか、食べ終わっちゃったらしい。
MIKIったら食いしん坊だな、ポカリ。





















「オウェっ」
とイケ面がえずいた。
「大丈夫?」
「えぇ、ちょっと風邪気味で。大変失礼しました」
「あ、それだったら長居するのも悪いよね」
「いえ、そんなお客様。が、お客様の明日にも響きますので、今日のところは」
「そうね。ご馳走様。おいくらかしら?」
「いえ、ここは選手村。御代は全て国民が血汗流して働いて捻出した税金から賄っております」
「あ、そうなの?いいのかな・・・?」
「えぇ!もちろんです!貴方は私たちに夢を与えてくれたじゃないですか!」
「そうかな?」
「えぇ。さ、おやすみください。今度のフリーでは見事な4回転ジャンプ、期待しております」
とイケ面は私をそっとドアの外まで見送ってくれた。









私は暖かい気分になり、ホテルに向かって歩き始めた。
が、「フリーが終わったら来よう!」と私は決め、店の場所を確認するために振り返った。









が、しかし。
先ほどまでその場所にあったBar「カリスマ」の姿はなくなっていた。
あれっ?どこ行っちゃったんだろ?
私はキュートに首をかしげながら、ホテルへと歩いていった・・・。








Bar「カリスマ」。
それは夜の選手村に現れ、困っている人を助ける(?)トリノという名の雪国のオアシス。
そんな蜃気楼がまた現れることを信じて、


一時閉幕。。。