YUIの大冒険8
(大冒険シリーズの詳細は4月10日〜を参照)
筆者からは、読者以上に「早く終わらないかな」と思われているYUIの大冒険8、いざ開幕。。。
「Hey,ユーだろ?うわさの新人は」
あぁっ?
馴れ馴れしく俺に話しかける命知らずの奴がここにもいる。
俺は殺意を持ちながら振り返った。
入獄して早半年。
毎日のように脱獄のために俺は穴を掘る。
が、失敗に終わり、途方に暮れていた頃。
「人格更正」だとか言う名前の労働作業。
きっとシャバでは俺が作った皮製のハンドバックが目玉が飛び出る値段で売られているに違いない。
メード・イン・ジャパンとは言うものの。
獄中もジャパンと言えるのか。
そんなことを考えながらブランド物のハンドバックを作り続ける毎日。
ふっと気を抜く昼休みに俺は話しかけられた・・・。
「ユーだろ?脱獄に挑戦しているって奴は?(右ブル)」
「ちょ・・・。何のことだい?」
「良いって良いって。私らは知ってるのよ(左ブル)」
(じゃぁ聞くなよ)
と心の中で突っ込みながら、俺はこのブルドック達が何を言いたいのかを掴みかねていた。
「で、ユーは何の罪で入ったんだい?(右ブル)」
「殺しかい?強盗かい?(左ブル)」
(いえ、立ちションっす)
とは言えずに、俺は無言のままで立ちすくんでいた。
「ユーだろ?シャバで100人殺めてきたクレージーボーイってよ(右ブル)」
「ユーに違いない。目がイッちゃってるもんね(左ブル)」
(生まれつきッス)
とは言えずに、俺はこの顔に生んだ両親を恨んだ。
「ユーに良いことを教えてやるよ(右ブル)」
「ユーだから教えるんのよ(左ブル)」
(何故だ?何故俺だから教えてくれるんだ?)
疑問が思い浮かび、俺は眉間にシワを寄せた。
「怒らないでくれよ。ただユーに睨まれたくないんだよ(右ブル)」
「そーそー。あたしらは数日後にはシャバに出れるんだから(左ブル)」
(あー、そーですか。よーござんすね)
と俺は心の中で皮肉を言った。
「ユーは、『物知りチューさん』って知ってるかい?(右ブル)」
「チューさんに聞けば何でも分かるよ。何つったってここの生き字引だからね(左ブル)」
(チューさん・・・?)
俺はこの名前を胸に刻み込んだ。
「脱獄を考えてるならチューさんに聞きなよ(右ブル)」
「だからあたしらを殺さないでおくれ(左ブル)」
(いや、殺さないッス)
と否定も出来ずに、俺はチューさんを探しに刑務所の中庭を歩み始めた。
一時閉幕。。。