エース鬼の悩み

「畜生!!何故だ?何故俺を使ってくれないんだ?」

暗いロッカールームの中。キッズ神戸のエースストライカーこと俺(河本鬼)はコブシから血が出るほどロッカーを殴りつけた。




ちなみに本日のお話し、PS2のソフト「サッカーチームを作ろう‘04」(略してサカつく)にまつわるお話しのため、その事情を知っていると面白いかもしれないが、知らない人でも何とか笑えるようにしたいが無理であった(と自己反省)。そのために予備知識のコーナーおよび呼び飛ばし可のコーナーを用意した。


これまで、このサカツク系は大好評のキャラクター、「筆者オーナー」のオーナー気分を「記者会見」という場において表現されるカテゴリーであった。
同じカテゴリー内のスピンオフとして、今回はキッズ神戸のエースストライカーこと河本鬼を主役とし、彼の悩みにスポットライトを当ててみたいと思う。そして本号を含め計6回に渡るシリーズ物を考えている。
なぜならば、冬のゴルフ冬眠を機に、サカつくをヤリつくしたい、と筆者は考えたからである。



予備知識のコーナー(読み飛ばし可)
まず、このゲーム、エンドレスである。
要するに、サッカー好きのゲーマー達に理想のチームを作らせ、そのチームを強くさせるのである。
ゲームのルールは非常に簡単。経営を安定させ(赤字になるとゲームオーバー)、J1ないしJ2に残留すれば良い(J2から降格するとゲームオーバー)。ゲームオーバーしない限りはエンドレスに続く。

よって、ゲーマー達は個々に「ゲームの辞めどき」を設定する。

各々、辞め時を設定するゲーム。筆者も一度は引退を考え(詳細10月7日号)、書斎に並べられているドラクエシリーズに手を伸ばしかけたのだが、結局、サカツクに戻ってきてしまった。


さて、このサカツク系を読む読者はかなり限られており、既に色々とサカツクについて知っているであろうが、一応おさらいとして、キッズ神戸のビジョンと戦略を復讐しておく。

ビジョン:『神戸の子どもに夢を与えること』
マスコミ・サポーター用スローガン:『頑張ろうぜ!神戸』
チーム内スローガン:『いつでも成長・いつでも反省』
原則:
選択と集中の原理に基づく投資展開。
②神戸の子どもを起点とした活動。
戦略:キッズ神戸を日本のレアルマドリッド(あるいは読売巨○軍)となる。
時系列プラン:
①スタジアムの拡大による収入増まで徹底したコスト削減。
②収入拡大の次には設備と地域、そして1人だけのスタープレーヤーへの投資集中。
③設備と地域が整ったら、プレーヤーへ投資。レアルマドリッド化を目指す。J1、世界戦など全ての試合にブッチギリの勝利(もしくは勝つまでリセットボタンの連射)。
戦術:
①選手・監督・スタッフの完膚なきまでの高い満足度とその維持(満足度が高い奴ほどパフォーマンスが高いと想定)
②地域へのボランティア活動の義務化。
③その他サポーターへの献身的な活動。


ちなみにキッズ神戸の現状は下記(55年目)。以下現状報告。
監督:高原
資金:3600億円
施設:フルコンプリート
留学先:ドーハ以外の良いところ。

チームのフォーメーションコンボはマジックマーシャル、3−5−2DVのサイドアタック.要するにこんなフォーメーション:
     FW  FW

SMF   OMF SMF

   DMF DMF

 CDC   CDF  CDF

       GK
 

チームメンバーは以下の通り:
注:名前、コメント、年齢、レベル、プレイスタイル、現状の使用のされ方、連携タイプを示している。ちなみにレベルとは神==>屈指==>完全==>十分充分の順番(それ以下もあるが、このチームにはそんな選手は存在しない。連携タイプのポイントとしては、鬼タイプ同士の連携は全くつながらない(だけども鬼型の連携タイプを持つ有望選手が多いこと)

FW(フォワード)
河本鬼(日本が誇る世界のストライカー。3回目の蘇生で本日の主役)37(神)エースストライカー(鬼)
大久保(最近外国に移籍した難波のストライカー)27歳(神)ストライカー、スタメン(東)
フリードリッヒ(連携抜群のポストプレーヤー)37歳(神)ハイタワー、スタメン(萩)
柳沢(カリスマSEに似ているチャンスメーカー)30歳(世界レベル)チャンスメーカー、スタメン(東)
勝浦(ゲームオリジナルキャラ)22歳(十分)ポストプレーヤー。控え。性格と連携に難アリ(高梨)
エレ(サッカーの神様ペレ)24歳(屈指)ファンタジスタ、(56年目2月に留学追放予定)(萩)
浦和九(ゲームオリジナルキャラ)18歳(充分)ストライカー。遊びで獲得(東)

OMF(オフェンシブミッドフィルダー
中田ヒデ(日本のサッカーを変えた男)29歳(屈指)トップ下、スタメン(右ウィングとして使用)(鬼)
グラーフ(オランダの天才。3回目の獲得)24歳(屈指)セカンドストライカー(56年目2月に留学追放予定)(鬼)

SMF(サイドミッドフィルダー
立浪(ゲームオリジナルの右サイド)32歳(屈指)アタッカー、控え(成長が止まった)(萩)
ギグス(左のウィング)33歳(神)エストレーモ、ブッチギリのスタメン(サントス蘇生待ち)(御)


DMF(ディフェンシブミッドフィルダー
与田(ゲームオリジナル)29歳(屈指)ダイナモ、控え、クビ候補(御)
戸田(ファール多そうなミッドフィルダー)31歳(神)ダイナモ、スタメン(御)
小野伸二(ハ○スのカレー大好き)40歳(神)レジスタ、控え(引退待ち)(萩)
源(プリンス・源)35歳(屈指)レジスタ、控え(名波のサブ、つなぎ)(阿見
名波(連携が悪いMF)21歳(十分)レジスタ、スタメン(鬼)


CDF(セントラルディフェンダー
バウアー(ドイツが生んだ皇帝。3回目の蘇生ゲッチュ)24歳(屈指)リベロ、スタメン(鬼)
宮本(バットマン、もしくはSM大王)32歳(神)ラインDF、スタメン(鬼)
森岡(Jリーガー)34歳(神)フィード、スタメン(鬼)
中田浩二(トルシェ大好き、ディフェンダーにコンバート)28歳(神)ボランチ、控え(東)
遠藤(Jリーガー。無理やりディフェンダーにコンバート)25歳(留学中)(東)
中西(知名度ゼロのJリーガーだが連携優)23歳、ベンチで控えてろ(萩)


GK(ゴールキーパー
楢崎(日本のゴールの守護神)26歳(屈指)攻撃的、スタメン(東)
横村(ゲームオリジナルキャラ)30歳(十分)オーソドックス、控え(給料安い)(東)
三神(オリジナル?)27歳(屈指)オーソドックス。クビ候補(萩)
合計25名(外人枠5枠)。

(以上読み飛ばし部分終了)

それでは、6回に渡る大シリーズのパート1「エース鬼の悩み」、ながーい前振りが終わったところで、いざ開幕。。。



「高さん、今イイッスか?」
俺が次世代エースとしてポジションを奪った相手、現在の監督こと高原さんを捕まえた。

「どうした、エース?手から血を流して。何かあったか?」
「高さん、やめて下さいよ、そのオーナーみたいな口調は。俺を『エース』って呼んでくれるのは嬉しいけど、現実問題で試合に出てるのは大久保じゃナイッスか」
「まぁ、そうだな。・・・それで?何の用だ?」
「いや、だから・・・」

と俺は胸の中にしまっていた悩みを打ち明けた。
① 実力的には俺が上にも関わらず、大久保がエースとしてスタメンを張っていること、
② 自分と連携の悪い鬼型の選手がこの1ー2年で増え続けていること(バウアー、グラーフ、名波など)
③ もう直ぐ36歳。年俸はチームイチの19億5000万で引退年齢(40歳)まで契約を結んでいる。その後の将来が不安(コーチとして雇ってくれるのか?)


「なるほど・・・」
「なぁ、高さん。教えてくれよ。俺は、チームから何を求められているんだ?」
「お前の悩みは分かった。だがなぁ・・・。選手の起用と契約、そして引退後の雇用に関しては、全てオーナーが権限を握っているんだ。」
「そ、そうなのか?」
「あぁ。まぁ俺も監督として既に10数年、チームを任されてきているから、あの人の考えは手に取るように分かるんだが、それをお前だけに言うのは不公平だと思っている」
「そうか・・・」
「まぁ、俺のアドバイスは、何も考えずに練習を続けろ、ってことかな」
「なぁ、高さん」
「うん?」


俺は高さんにオーナーと直接話し合いたいことを言った。高さんは猛烈に反対したが、最終的には俺がオーナーと話したがっていることをオーナーにそれとなく伝えてくれる、と約束してくれた。



そして2日後。。。





オーナー室でよく見かける金髪の姉ちゃんのサラが俺を呼び出した。
「お兄さん、ちょっと顔かせや」
「はっ?」
「オーナーがお兄さんに会いたいっていってるがな」
「あぁ。なぁサラさん、多分、『鬼さん』って言いたいんだろ?でも『お兄さん』、つまりビッグブラザーって呼んでることになるよ」
「言葉は伝わればよろし。イケテナイ突っ込みは嫌われるね」
「・・・」




俺はオーナー室の前に立ち、大きく呼吸をしてからオーナー室に入った。
「失礼します」
「おぉ、エース。よく来たな。まぁ座ってくれ」
ジョルジオのスーツに身を包んだ、英国系紳士の香りがするカリスマが俺を迎えてくれた。確か年齢は74歳。29歳の若手ビジネスマン時代にこのチームを発足させた、と風の噂で聞いている。55年が経過した今も、カモシカのように軽い足どりで元気にチームの経営を行なっている。



俺はこのカリスマと余り面識がない。若いときは、毎年シーズンの途中で呼び出されたが、1年契約年数を延ばす代わりに100万円も年俸を上げてくれた。その後、5年ごとに契約を結び、契約更新の度に5億円くらい契約料を上乗せしてくれたのがこのオーナーだ(まぁ今思うと、若手のころ契約の1年延長あたり100万という対応は失敗だったかもしれないが)。2年前の契約交渉以来の再会となる。




「で、今日はどうしたんだ、エース?」
「実は・・・」
本題について話さない方がいい、と高さんからアドバイスを貰っている。だが、折角こうやって会えたんだ。今日は腹を割って話が出来ればいい、と思って来ているから、ブッチャけトーク全開で行こうと決心した。






「オーナー。俺の起用方法に不満があるんだ。なぜ大久保をスタメンとして使うんだ?しかも、大久保の控えにはエレを使ってるじゃないか!?」
「エース・・・。よく考えてくれ。エレは今伸び盛り。試合に出せば出すほど実力を高め、吸収していく。将来を担う人材として、彼を使用することに何の問題がある?」
「将来を担う、か・・・。そうだな。確かに、俺は長くてもあと3年。そういう意味では確かにそうかもしれないな・・・」
「分かってくれて嬉しいよ、エース」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。フォワードのポジションは2つ。高さんの得意のフォーメーションコンボのマジックマーシャル(以後MM)にはエースストライカーのプレイヤーの使用が必要だ。つまり、俺か大久保。その話をしにきたんだ!」
「そうだったね・・・」




オーナーは腰を深くソファーに沈め、静かに、しかし揺るぎない声で話し始めた。





「いいか、エース。大久保を使用する理由は2つある。1つは将来を視野に入れている点。もう一つは連携という点だ」
「将来・・・」
「そうだ。君も今言っていたように、君はこの先3年のキッズを、大久保はそれ以降約10年間のキッズを担っていく人材と考えている。そのため、大久保が成長期のときは、大久保を、大久保の調子が悪いときはその他の成長期の人材を起用することを考えているんだ」
「お、俺だって成長期だぞ・・・」
「あぁ。君は2段階に別れて成長するタイプだったね(注:河本鬼は稀なタイプで20代と30代後半に成長期が2回あるタイプ)。だから、大久保の成長期次第で、君は使用される候補に入ってくるよ」
「・・・そうか。じゃぁ俺は何をすれば良い?」
「それは自分で考えないと、駄目だ。君は既に37歳。子どもじゃないんだ。上からの指示を待っているだけじゃ、イケナイ年齢だろ?」
「そ、それもそうだな・・・」
「いいか、エース。自分で考え、自分で行動し、チームに貢献していく。それが出来なければ、決していいコーチにはなれないぞ」







コーチ・・・。その言葉がオーナーと会うことになった他の理由を思い出させてくれた。









「なぁ、オーナー。別の話をしていいか?」
「何だね、エース?」
「今、俺は19億円も年俸を貰っている。非常に満足しているし、この年俸に見合うように今後も活躍していくつもりだ。だが、将来のことが若干不安になっているのも事実だ。」
「ほう」
「それで、だ。できたらこのチームのコーチとして引退後も貢献して行きたいと考えているんだ」
「そうか・・・。確かに君が将来のことを不安に思う気持ちは分かるよ。だがね、君は現役だ。まだまだフィールドを駆け回って、ガンガン点を取るのが仕事だろ?まずはそこに焦点を当ててくれないか?君が3年後に引退するとき、そのときに今の話をしようじゃないか。まずは、スタメンの座を奪い、神戸と世界の子供達に夢を与えること。それが君がしなければいけないことだろう?」
「そ、そうだな・・・」
「道のりは厳しいぞ。キッズには次々と有望な新人が入ってきている。彼らの模範となるようにも是非とも練習をすべきかと思うぞ」








新人・・・。そう、これが俺がここに来たもう一つの理由。









「オーナー。一つ思っていることを聞いても良いか?」
「どうした、エース?」
「この2年間で新人がごっそりと増えて、伸二さんもスタメン落ちし始めている。それ位有望な選手だということは分かっているつもりだ。ただ、どうも俺と連携が悪いタイプが多い気がするんだが、何かあるのか?」
「それは具体的には、バウアー、グラーフ、名波。そして4年前に獲得した中田ヒデ(当時25歳)のことだな?」
「あぁ。DF陣はそれじゃなくても宮本や森岡のように連携が悪いタイプが多い、と思っていた矢先にこんな雇用は何か裏があるんじゃないか、と思ってしまうんだが・・・」
「それは有望な人材が偶々君と同じ連携タイプだからさ。なぁ、エース知ってるか?」
「何を?」
「君と同じ連携タイプ(注:鬼型と鬼型は連携が悪い)を世間で何ていうか?」
「いや・・・」
「『鬼』タイプと言うんだ。もちろん、グラーフ、ヒデ、バウアーなどの超有望な選手がいるにも関わらず、だ。どう意味か、分かるか?・・・君がそのタイプの代表的存在、という意味で君の名前が代名詞として使われているんだよ」
「・・・」
「君は世間が認める有望な選手なんだ。グラーフ、バウアー以上の、ね。」
「・・・」
「さぁ、私が次に言う言葉はわかっているだろう?」
「ふっ、オーナー。男同士の会話にこれ以上の言葉はいらないぜ。。。ちょっくらフィールドに用があるからいってくらぁ。じゃぁな!」










俺は、とめどなく溢れる涙をオーナーに見せないように、オーナーの部屋を飛び出した。









ありがとう、オーナー。やっぱ、あんたカリスマだよ。
俺とアンタは通じ合うものがあることが分かった。
オーナー。あんたには絶対後悔させないくらい、点をガンガン取ってやるぜ!






俺は、言葉に出来ないオーナーに対する感謝の気持ちを胸に、フィールドに走っていった・・・。

一時閉幕。。。