ポストマン勝浦の苦悩

「畜生!!何故だ?何故俺は試合で使われないんだ?」

薄暗いキッズ神戸のロッカールームの中のトイレの個室にて。キッズ神戸の将来を担うポストプレーヤーとして多額の契約金でドラフトされ、鳴り物入りしたハイタワーこと俺(勝浦)は、ズボンを下ろしながら、トイレに荒々しく座った。




ちなみに本日のお話し、PS2のソフト「サッカーチームを作ろう‘04」(略してサカつく)にまつわるお話しのため、その事情を知っていると面白いかもしれないが、知らない人でも何とか笑えるようにしたいが無理であった(と自己反省)。

本日も「サカツク系」のスピンオフシリーズとして、今回はキッズ神戸の控えハイタワー(ポストプレーヤーのレベル2)こと勝浦を主役とし、彼の悩みにスポットライトを当ててみたいと思う。

前振りが終わったところで、いざ開幕。。。



「監督、今、話してイイっすよね?」
MM(マジックマーシャルの略。以後MM)監督としてこの11年間、キッズ神戸を引っ張ってきた高原監督を俺は捕まえた。監督は、入団会見のとき「今後のキッズの未来を担う」と力強い言葉でチームに迎えてくれた人だ。










「どうしたカッチャン?昨日はタッチャン、今日はカッチャンに捕まえられたな。まるで南ちゃんの気分だ」
キッズ神戸の「タッチ」コンビとして右サイドの立浪さんと俺は「タッチャン、カッチャン」というニックネームで呼ばれている。



「監督、俺が入団したとき、言ってくれましたよね?『カッチャンは将来を担う選手だ』って。俺も入団して丸3年っすよ?この3年間、俺がして来たことと言えば、毎日毎日2軍で練習。晴れの日も雨の日も練習、練習。留学させてくれるわけでもなければ、試合に出してくれるわけでもない。俺、正直腐りそうですよ!こんな生活はもう嫌だ!何で俺を試合に使ってくれないんスカ?」
「ふむ・・・」
「今のフォーメーションのMMに必要なハイタワー(注:ポストプレーヤーのレベル2)はチームに俺とフリードリッヒだけ。そのフリードリッヒも37歳。あと3年もすれば引退でしょ?そろそろチーム体制を俺中心に仕立て上げた方がいいんじゃないですか?」
「カッチャンの言いたいことは良く分かるよ。でもな、選手の起用と契約に関しては、全てオーナーが権限を握っているんだ。」
「そ、そうなんすか?」
「あぁ。まぁ俺も監督として既に10年数年、チームを任されてきているから、あの人の考えは手に取るように分かるんだが、それをお前だけに言うのは不公平だと思っている」
「なるほど・・・」
「まぁ、俺のアドバイスは、何も考えずに練習を続けろ、ってことかな」
「監督!」
「うん?」


俺は監督にオーナーと直接話し合いたいことを言った。猛烈な反対を押し切り、最終的には俺がオーナーと話したがっていることをオーナーにそれとなく伝えてくれる、と約束してくれた。



そして今日。。。





オーナー室でよく見かける金髪秘書のサラが俺を呼び出した。
「カアチャン、ちょっとコッチ来いや」
「はっ?」
「オーナーがカアチャンに会いたいっていってるがな」
「あぁ。ありがとう。なぁサラさん、カアチャンじゃなくて「カッチャン」だぜ?俺のニックネーム」
「言葉は伝わればよろし。つまらん突っ込みは最低ね」
「・・・」










俺はオーナー室の前に立ち、大きく呼吸をしてからオーナー室に入った。
「失礼します!」
「おぉ、カッチャン。よく来たな。まぁ座ってくれ」
エルメスのスーツに身を包んだ、英国系紳士の香りがするカリスマが俺を迎えてくれた。





俺はこのカリスマと毎年のように顔を合わせている。毎年、年俸交渉の直前に呼び出され1年契約年数を延ばす代わりに100万円も年俸を上げてくれる。俺の今後の活躍にかなり期待しているに違いない。




が、俺も堪忍袋の尾が切れそうだ。今日という今日は言わせて貰うつもりだ。




「カッチャン、今日はどうした?」
「オーナー。俺の起用方法に疑問があります。なぜ俺はスタメンとして使ってくれないんですか?」
「ふむ・・・。いい質問だな。そろそろ、カッチャンが試合に出たいという頃だと思っていたよ。」
「ですよね!?俺も将来を担うポストプレーヤーとして巨額の契約金でこのチームにスカウトされて早3年。実力的には、確かにフリードリッヒには勝てないかもしれない。だが、フリードリッヒが引退するまであと3年、長くてもあと4年じゃないですか。将来を担うポストプレーヤーとして、本格的に俺を使っていくならば、そろそろ試合に使ってくれてもいいんじゃないでしょうか?」
「確かにそうだな。カッチャンの言うことも一理あるよ」
「ってことは、今後は試合に使ってくれるってことですね?」
「ふむ・・・。」
オーナーが黙り込む。





(単刀直入に聞きすぎたのか?)
ふと俺の中に疑問が湧きあがった。






しばらくの沈黙の後、カリスマが口を開く。
「カッチャンの言いたいことは良く分かるよ。だが、現在私の考えも固まっていないし、高原とも話し合わなければいけない。どうだろう、カッチャン?今すぐ返事ができないのがココロ苦しいが、ここはしばらく時間をくれないか?色々考えて、結果を出したいと思っているんだ」
「・・・わかりました。」
「カッチャン。一つだけ約束して欲しい」
「何でしょう?」
「『いつでも成長・いつでも反省』の心を忘れないで欲しい。そして、チームを引っ張るように、君が実演することで、模範となってほしいんだ。私の回答は時間がかかるかもしれない。でも、必ず答えを出すから、それまでは、『いつでも成長・いつでも反省』の精神で日々精進してほしいんだ」
「もちろんです!!これからも今まで以上に練習に勢を出しますので、見ていてください!」
「ありがとう、カッチャン。将来も高原の指導の元、MM(マジックマーシャル)を続けていくのであれば、君の存在はチームにとって必須になる。必ず『いつでも成長・いつでも反省』を実施してくれ」
「はいっ!お忙しいところ、スミマセンでした!」
「いやいや。チームメンバーと話すことが出来て、私も嬉しいよ」


とオーナーはジェントルメン風に俺を送り出してくれた。







「いつでも成長・いつでも反省」。
カリスマとの約束だ。彼の回答を聞く日まで、俺は必ずこの精神を貫いて、チームの模範として、やり続けてやる。



ありがとう、オーナー。正直、腐っていた俺のやる気を起こさせてくれて。
やっぱアンタ、カリスマだよ。
口には出せない感謝の気持ちを胸に、俺の脚は、練習場に向かって走り始めていた・・・。


一時閉幕。。。